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トルコ中央銀行は10月21日、金融政策決定会合を開き、主要政策金利の1週間物レポ金利を年18%から16%に引き下げる決定を下しています。

事前段階からエルドアン大統領が中銀メンバーを3名もクビにしているので、利下げが出るであろうことは市場でも事前に予測されていたことですが、インフレが激しさを増す状況下で2%もの利下げを断行し、さらに年内再利下げの可能性まで示唆したことからトルコリラは主要通貨に対して軒並み下落し史上最安値を更新中の状況に陥っています。

トルコリラ円1時間足

日本の個人投資家がスワップ狙いで多くロングを保有しているトルコリラ円も、予想通り中銀発表を受けて下落しておりすでに11円台が定着している状況です。

エルドアン大統領は利下げ意向がとても強く、意に沿わない中銀総裁を過去2年半で3度交代させており、今後もこうした人事が強まる可能性があるので市場は警戒感を強めています。

伝統的な経済学の手法から考えるとエルドアンの主張する内容はかなりエキセントリックではありますが、米国FRBもインフレが示現しかかると常に一時的なものだと言い放って利上げをしないようにしていて、各国の中央銀行は少なからず政権から影響を受ける存在なので、トルコだけを笑っている場合ではないことが見えてきます。

ドル円、クロス円もとばっちりで下落

割を食ったのはドル円とクロス円で、トルコ中銀の政策発表直後には大きな動きはでなかったものの同日の夜9時半ごろから大きく崩れ始め113.650円レベルまで下落したドル円にクロス円が連動するような相場となりました。

ドル円もトルコリラ以外のクロス円も10月初旬から延々と上昇を示現してきていたので、これを口実にしてスピード調整の下落となった可能性もありますが、FT紙によれば間違いなくトルコ中銀の利下げの影響を受けた結果であると言った見方が強まっています。

ただドル円については112.800円を明確に割り込まない限りはまだ上昇トレンドを継続していく可能性があります。

この先さらに影響がでるかどうかは不明ですが、年内に再度利下げとなればそれなりの影響が再来しそうなので注意が必要です。

ドル円15分足

トルコリラ円はもはやスワップ狙いの通貨ペアとしては不適格に

国内では高金利通貨であることからスワップを獲得するためにトルコリラ円を買うという個人投資家がかなりいるようですが、ここまで価格が下落しさらに金利まで低下するということになればほとんどスワップ狙いのトレードが成立しなくなり、一旦ポジションの解消などを検討する時期となりそうです。

金額が小さいのであまり危機感を感じませんが、12円が1円下落するというのはドル円でいえば110円が100円になるぐらいのインパクトがある話で決して許容できるレベルではないことがわかります。

また実質金利ベースで考えるとこの利下げはマイナス金利状態なのでスワップもほとんどつかなくなる可能性は高く、利用しているFX業者の取引条件がどう変化するかにも十分な注意が必要になりそうです。

本来為替は各国の通貨の金利の違いを享受するものですが、足もとではほとんどの国に金利がないことからスワップで利益を得るためには相当リスクの高い新興国通貨の取引をせざるを得ない状況です。

トルコは欧州に繋がる地続きの要所として中世から機能していますが、隣国シリアとのトラブルも解消しておらず産油国でもないことから国は決して安定しておらず、ここからの為替取引ではこうした周辺事情も含めてその可否を検討する必要がありそうです。