中央銀行政策決定ウィークの最後となった17日の東京タイムで日銀政策決定会合の結果が発表されましたが、その内容を巡って相場は思わぬ展開となりました。
一体何が起きたのでしょうか。
実は市場自体が日銀の政策変更が近いのではないかと疑い始めていることがこの根底にあることがわかります。
世界的なインフレ、もしくはスタグフレーションが進む中にあって本邦だけが過去30年近く続けてきたデフレを維持できるのか相当な注目を集めており、日銀の対応次第ではとんでもない相場になるリスクも高まることを示唆するような動きとなってしまいました。
市場参加者ノーマークのはずが緩和縮小への警戒感から日経売られる
今回の日銀政策決定会合では特段新しい政策が出てくることは全く期待されておらず、市場参加者にもっとも無視された政策決定会合となるはずでしたが、新型コロナウイルス対応の資金繰り支援策の縮小が決定されたことから、市場は日銀も他の主要国の中央銀行の政策変更とともに引き締め方向に動くのではないかといった憶測が強まったようで、短期の投資家の売りがかさみ結果的に日経平均で500円以上の下落を示現してしまいました。
午後3時半から記者会見を行った黒田総裁は、金融政策は自国の経済・物価の安定を目指しており経済・物価に応じて金融政策の方向性に違いが出るのは当然のことと説明しています。
とくに海外中銀の決定が日銀の政策にただちに影響を及ぼすことはないとも強調、日本の物価上昇率は一時的な要因やエネルギーを除いてもプラス0.5%程度で、23年度でも1%程度の伸びに留まるとして国内にはインフレは到来しないことを示唆しています。
ただ現実の社会では食品をはじめとして様々な商品が値上げラッシュを控えており輸入物価も驚くほど上昇し始めたので、どうみても本邦だけが影響を受けずにデフレを継続するとは思えず、悪いインフレ、スタグフレーションの足音が聴こえてきそうな状況です。
果たして日銀がいつまでこうした緩和を続けられるのかに市場の大きな注目が集まることになりそうです。
出鱈目なことを言い出す安倍元総理
安倍元総理はここの所様々な講演会に登場しては日銀の財政ファイナンスを公然と認めるような発言をし始めています。
それによると赤字国債のほとんどは市場を通じて日本銀行に買ってもらった。借金を全部背負っているのは日本銀行である。日本銀行は国の子会社。5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないというのが元首相の説明です。
しかし実際1000兆円も赤字国債を出しており金利が上昇すれば利息負担だけでもとんでもない政府負担が到来するので何も問題はないというはずがなく、MMT理論をエンドースするかのようなこの発言は金利上昇でいきなり破綻し、日銀の金融抑圧政策も終わりを迎える可能性が出始めています。
日銀が緩和終了利上げに動けば相場は相当大きな影響をうけることに
日銀の緩和措置は主に国債の大量買入れによるイールドカーブコントロールの実現で一切金利を上昇させない上述の金融抑圧政策と、ETFの買い入れによる日経平均株価の人工的な上昇が2本柱となっていますが、緩和措置を終えた場合には利上げも視野に入ることになり株価を維持するのは相当難しいものになりそうです。
また買い付けたETFを闇雲に売却することもできずどのように清算していくのかが今後大きな問題になる可能性があり、日銀のこの先の政策変更は株にも為替市場にも相当大きな影響をもたらすことが予想されています。
日本株は今のところ憶測から売られる状況となっていますが、実は菅前総理が辞任した直後に上昇した後は完全にもみ合いを続けており、年末も上昇する相場にはならないまま1年の相場を終えてしまいそうです。
日経平均が3万円を超えた時には市場は色めき立ちましたが結局それ以上上昇が全くできないまま大納会を迎えることとなり、来年期待できそうな材料が見つからないのがなんとも残念です。
むしろ日銀の政策変更が強まれば全く巻き戻しになる危険性もあるだけに、ここからの日銀の動向を注視せざるをえないのが正直なところです。