11月15日、中国の習近平国家主席が米国のサンフランシスコを訪問し、赤い旗を振る大勢の市民から大歓迎を受けました。

 

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習近平国家主席の訪米はあまりにも唐突であるにもかかわらず、複雑な国際情勢の渦中にある米国は冷え切った米中関係を否応なしに修復せざるを得ない状況となっています。

米中の対立をなんとしても避けようとする背景には、米国が迫られるウクライナと中東の二正面作戦があります。

イエレン財務長官は、資金的な側面を考えてもこの二正面作戦に対応することは十分可能との発言を行っていますが、33兆ドルもの連邦債務を抱える米国にそんな余裕があるようには見えない状況です。

ネオコンからは、すでに投資妙味のなくなったウクライナからは手を引くべきとの声も上がっており、それが実現すれば、ウクライナのゼレンスキー大統領も停戦・終戦交渉を加速するのではとの憶測も飛び交っています。

米国は依然としてイスラエルを支持する姿勢を変えていませんが、もし今後ハマスの背後にいるイランが直接介入し、アラブ諸国と供に西側への石油の供給停止やホルムズ海峡の閉鎖を行えば、あっという間にインフレが巻き起こり利上げとどころの騒ぎではなくなります。

この現状の中、米中対立が激化すれば来年の大統領選挙を前に、政治的にも経済的にも大きなダメージを負いかねないというバイデン政権の危機感が、今回の米中会談を実現することになったと見られます。

 

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24年の大統領選挙を前に米中直接対立の激化は回避か

今回の米中首脳会談で、どこまで互いの対立構造を軟化できるかは未だ不透明で、実際の会談で交わされた議題がそのまま世界に発信されるとも考えにくい状況です。

しかし2024年の大統領選挙を前に、向こう一年、経済における対立が少しでも和らげば、一時的にせよ米中貿易にはプラスに作用する部分がありそうです。

米中対立で双方の国が抱える懸念材料は山積みですが、少なくともNVIDIAを始めとする米国の半導体産業のような、民間レベルの貿易に対する厳重な規制が緩和されることには大きな期待が寄せられています。

また、ここ最近中国が積極的に進めている米国債売りを一旦停止し、外貨準備の一貫として買い増しと保有を続けてほしいというイエレン財務長官の要求が実現できるのかどうかも大きなポイントとなっています。

15日に行われた習近平国家主席との夕食会では、アップルのティム・クック最高経営責任者やブラックロックのラリー・フィンクCEOが出席したほか、クアルコムのクリスティアーノ・アモン氏やブロードコムのホック・タン氏など、テクノロジー企業の経営者らも招待客リストに名を連ねました。

イスラエル情勢が激化すれば、イランの背後にいるロシアや中国と事実上の対峙を迫られるリスクが高まるため、中国とだけでも直接対話ができる環境を整えておくことは、たとえ今回の会談で具体的な成果が上げられなかったとしても大きな意義となりそうです。

米中対立の緩和は日本市場の追い風にも

ウクライナ情勢をめぐりロシアと対立する米国ですが、次に対立が表面化するのは中国と言われており、専門家からは台湾有事の際は間違いなく日本も巻き添えを食うという懸念の声が上がっています。

そのため、米中の直接対立がまがりなりにも弱まることは日本にとって追い風であり、規制の厳しい対中貿易が今後どのように改善されるかにも注目が集まります。

隣国にとって、米中関係の改善は利益機会の拡大にも繫がります。

よく「遠くの戦争は買い」といった誤った格言も出回っていますが、株式市場が活況を呈することができるのは「平和の配当」であり、そもそも戦争の最中にはあり得ない状況であるため、この時期こそ株価上昇の期待も高まります。

米中対立が弱まることにより、為替相場にはどのような影響が及ぶのかは不明ですが、豪ドルやニュージーランドドルなど中国経済と密接な繋がりを持つ通貨に取引妙味が発揮される可能性も大いにありそうです。