2月4日の金曜日、米国の雇用統計が発表となりましたが、今回は事前段階でホワイトハウスが色々数字が悪化する可能性について事前に言い訳するという異例の事態が起き、どれだけ悪い数字になるのかが注目されましたが、非農業部門雇用者数が前月比46万7000人増と市場予想の15万人増程度を大きく上回る結果となりました。
また平均時給の伸び率も市場予想以上となり、米10年債利回りは1.9%台に乗せて米国のインフレ長期化観測が強まる形になっています。
ただ、4日のECB理事会の結果を受けたラガルド総裁の会見ではインフレの恒常化とECBの利上げを排除するような発言が聞かれなかったことから、市場は年内での利上げを急速に織り込む形となりユーロは対ドル、対円で大きく上昇する動きとなりました。
とくに足もとで利上げの可能性がほとんど感じられない円に対してユーロの上昇は完全にオーバーシュート気味の展開で、週明けこれがある程度元に戻るのかそのまま上昇軌道に乗ることになるのかどうかが非常に注目されています。
ユーロドルは雇用統計を受けて多少押し戻されましたがユーロ円は強さを維持したままであり、このままでいけばさらに上方向を目指す可能性もでてきています。
市場の利上げ織り込み次第で強弱が変わるドルとユーロ
1月までは米国FRBがどのようなタイミングで何回利上げを行うのかが市場の最大関心事でしたが、ECBがインフレの進行を否定せずしかも年内に利上げを行うという観測が強まったことで、ここからはドル、ユーロそれぞれの通貨について市場がどれだけの利上げを織り込むか次第で強さが変化する可能性がでてくることになり、かなり先行きの見通しが立てにくくなることが予想されます。
FRB幹部は株に大きな影響がでないように総出で市場に対して過度な利上げ期待を持たないよう抑制的なコミュニケーションをとりはじめていますが、実際はインフレの進行具合次第の部分が大きく、現状で市場が織り込んでいる年間4回、1%程度の利上げを大幅に超える可能性すらあるだけに、ここからは毎回のFOMC毎にその状況を探るというなかなか難しい展開が続きそうです。
また今回0.25%の利上げを実施した英国中銀もさらに利上げの意向があるようで、こちらも相場の動きを難しくさせる要因となるでしょう。
ECBについても年末までに0.5%程度の利上げを市場は織り込み始めており、ここからインフレが加速することになればそれ以上の利上げを織り込む可能性もあって、ドルとユーロの強弱感を予想するのはかなり難しそうな時間を過ごすことになりそうです。
円だけが弱含むと判断するのは拙速すぎ
ここまで主要通貨に利上げの観測が高まると全く利上げ見込みのない円だけが独歩安になりそうな気配ですが、米国のCPIはすでに7%の上昇を記録していてここから利上げのペースが下がることになればドルといえども実質実効金利はマイナスと見られる可能性もあり、円が一方的に弱含むかどうかは判らない状況です。
実際12月のCPI発表時はドルが売られるという相場も実際に示現しているので利上げ通貨が強くなるとは限らず、円も一方的に売込まれない可能性も視野に入れておく必要があります。
また市場が利上げを織り込みすぎると実際の利上げでドルやユーロが売り戻させるということも過去には何度も起きています。
このあたりも為替の難しいところで、金利が高いから通貨が買われるという単純なものではない点もあらかじめ理解しておきたいところです。
そもそもこうした各国中銀の状況と国内のインフレを考えて日銀も緩和の巻き戻しに動く可能性は全くないとは言えないので、このあたりにも相当な注意が必要です。
10日の米国CPI速報には注意が必要
週明けの相場は10日に1月米国CPIの速報値の発表がありますが、市場の事前予測よりも強い数字が出た場合にはドルは上昇も下落も両方の可能性があり、なかなか厄介な状況を迎えそうです。
市場の保有ポジションがあまりにも一方に高向きすぎればどれだけ金利が上昇しても荷崩れを起こすこともありますし、ショートが積みあがりすぎればそれだけを理由にして相場は大きくショーカバーすることもあり、相場がどう動くかは十分に値動きを観察することが重要になります。
週明けの相場は3月の各国中欧銀行の政策決定会合の間となることから様々な思惑で相場が動くことが予想されます。
一方向に決め打ちするのではなくリアルな相場の動きにあわせて柔軟にトレードしていくことが求められる1週間になるでしょう。