2月第1週の木曜日である3日、英国中銀、ECBと主要な中央銀行の政策決定会合が同日相次いで開催されることとなりましたが、日銀を除いた主要中銀は一斉に利上げの方向へ向かうことが見え始めており、ここからの為替相場でドル高だけが進行しなくなる可能性が出始めています。

今のところ実際に利上げを行ったのは英国中銀だけですが、この3月以降FRBの織り上げとともにECBの利上げ観測が出始めることになる可能性があり、各通貨の強弱感が大きく変わりそうな状況になってきています。

なにより主要中銀が利上げを行うことで債券や株式市場に大きな影響が出て、それがきっかけでこれまで14年近く続いてきた中央銀行バブルが終わりを迎えることにならないのかも気になるところとなってきました。

BOEは規定の利上げだがECBの急な方針展開で市場は利上げ織込み

英国中央銀行はMPC・政策決定会合を3日に開催して、政策金利を事前予想どおり0.25%から0.50%に引き上げることとなりました。

ここまでは分かり切っていたことなので市場は完全に織り込む形となっていましたが、当日の会合で9人の政策委員のうち4人がさらに0.50%の大幅な利上げを支持したことが公表されたことから想定外のサプライズとなり、ポンドは大きく上昇することとなりました。

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さらにこのMPCの発表後に開示されたECB理事会の政策決定会合では、主要政策金利を予想通り据え置きました。

サプライズが起きたのはその後に開催されたラガルド総裁の会見で。昨年12月まではとにかくインフレは一時的の一転張り、2022年内は一切利上げしないと言い切っていたはずが、今回の会見では一転「インフレは高止まりし、予想以上に長期化する公算が大きいが、今年を通じ鈍化する」と予想。

その上で「昨年12月時点のECBの予測と比較すると、とりわけ短期的にはインフレ見通しに対するリスクは上向きに傾いている」という認識を示し、「明らかに状況は変化した」と語ったことから、具体的には利上げを口にしていませんが市場は猛烈に今年内でのECBの利上げを織り込む結果となりユーロは対ドル、対円で暴騰する動きとなりました。

もともとラガルド総裁はECBの政策戦略的支柱であるレーン理事の発言をなぞるように広報的な発言を繰り返すだけで、自らECBに一定の政策的方向感を与えるような存在ではないので今回の発言も誰かの差し金に乗ったものと思われますが、それにしても急激な宗旨替えは市場に大きな衝撃を与えることとなったようです。

ラガルド会見以降金融市場では2022年内で0.4%から0.45 %程度の利上げが実施されるという見方が広がっており、早ければ夏前に第一弾の利上げが実施されるのではといったかなり前のめりの憶測が出始めています。

日銀を除く主要中銀が利上げに向うことでドルだけ独歩高ではなくなる

2008年のリーマンショック以降、日米欧の中央銀行は連携して金融緩和措置を繰り広げ、さらに新型コロナ感染では米国が率先して過去にないほどの緩和を行ってきました。

しかしここへきて各国ともにインフレに直面するようになってからは自国の経済を守るという視点だけで緩和から撤退し利上げを行う政策決定に傾き始めており、3月のFRBのFOMCを皮切りにリアルでの利上げが順次行われています。

こうなると真っ先に利上げということで上昇してきたドルも相対的なポジションが変わる可能性は高く、春先に向けてドル高だけが進行する相場は一定の終わりを迎える可能性がでてきいます。

為替相場はあくまで相対的なものなので、リアルの金利と先行きの政策金利の上昇の織り込み具合が相場に大きな影響を与えることになりそうです。

たださらに危惧されるのは、こんなに同時に主要中銀が緩和からの巻き戻しと利上げ、資産売却などの積極的な動きに転じた場合、これまでの中央銀行のバブル相場が果たして維持できるのかという問題が発生し、足もとの債券、株、不動産といったすべての資本市場領域におけるいわゆるエブリシングバブルがいきなり崩壊していまうのかが非常に気になるものとなってきています。

まずは3月実際にFRBが利上げを始める前後から相場に著しい異変があるのかが注目され、2018年末のように株式市場がかんしゃくを起こし始めるような事態に本当に利上げができるのかに大きな関心が集まります。

また現状では完全に蚊帳の外に置かれている日銀すらも物価の上昇が顕在化したときに緩和を継続できるのかが大きな問題で、いずれにしてもすべての金融市場に劇的な変化が訪れるのか慎重に見極める必要がでてきているようです。

ここからの相場は想像以上に難しいものになるでしょう。