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日銀は月末最終週の3月28日、指値オペの実施を通告、応札がないまま0.25%に10年債金利が上昇したことから、さらに31日まで国債を利回り0.25%で無制限に買い入れる措置を実施すると発表したことから朝から大きく上昇したドル円はさらに暴騰状態となり、ロンドンタイムの入り鼻に125円台をつっかけるといった凄まじい展開となりました。

世界の主要中銀がインフレ対策で利上げを行おうとしている真っ最中に、日銀だけが利上げを抑制する動きに奔走し始めていたので市場の大好物となってしまったことは否めません。

年度末ということで企業業績への貢献から月内の円安は維持されるとは思われますが、果たしてこの動きを誰がどう止めることができるのかが非常に大きな問題になりつつあります。

すでにドル円相場は過去に黒田総裁が牽制球を一度だけ投げた125.860円に接近しつつあり、月曜日の異常なほどに感情的・挑戦的になった投機筋主体の相場状況をみると、日銀がこの円安をどこまで許容するのか試しに行くであろうことが容易に想像できます。

こうした状況を見ると1990年ごろにイングランド銀行とジョージソロスが市場でポンドを巡って壮絶な戦いを繰り広げ、まさかの中銀敗北に陥ったケースが思い出されますが、中央銀行としての機能が消失するというよりは円の価値が紙屑化する可能性が非常に高まるだけに、ここからの日銀の挙動が非常にマーケットに影響を及ぼすことになりそうです。

足もとの買いあがり相場の主体は投機筋なので買ったものはどこかで反対売買せざるを得ません。

一旦調整下落が入ることもありそうですが、3月は売りあがった本邦個人投資家のポジションのストップロスが最高な上昇の燃料となってしまったようで、大きく損失を被ってしまったトレーダーが心配されます。

アベノミクスの裏ミッション・金融抑圧政策の持続が露見

本来、中央銀行はインフレが到来した時にそれを金融政策で退治することが大きな役割として認識され、実際各中銀ともにそれを大きな目標として政策決定を行っています。

日銀の場合、今回の連続指値オペの実施によりとにかく債券金利を上昇させず徹底的に低金利に制御することが、インフレ対策よりもプライオリティが高いことを世界中に知らしめることとなり、アベノミクスなどと名づけられた金融政策の裏ミッションである金融抑圧を持続させることが最大の目標であることを露見させてしまいました。

円の水準を一定に維持することなく円安を完全に容認する形となったこの連続指値オペの実行は日米金融当局の政策が真逆であることを明らかにし、しかもここからFRBがさらに利上げを継続していこうとしていて、円安を抑止する材料が市場で完全に喪失されることとなってしまいました。

すでに相場では指値オペがニュースのヘッドラインに出るたびにドル円が買い上げられており、このままでは130円に到達するリスクさえ高まっています。

生半可な円安けん制発言ではこの円安は止められない

4月、本邦は年度初めということもあり、機関投資家や実需などからヘッジのドル売り円買いが出る時期も到来しますが、日銀が事実上円安を公認する動きを見せたことから4月以降も円安が簡単に止まる可能性は低く、中ピッチな円安に対してそれなりの調整が入ることはありそうですが、これが一過性のトレンドにすぎないと考えるのは相当難しい状況になってきました。

急速に進む円安ドル高を受けて鈴木財務大臣は、29日の会見で「悪い円安にならないようにしっかり注視する」と述べていますが、具体的な円の水準について語ることは避けています。

財務大臣としてはどこまでが円安過ぎるのかを語るのはかなり難しいと思われますが、とりあえず上昇が収まったかのように見えるドル円が再度ドル高を目指すのは時間の問題であり、ここからは誰がどのように円安を制御するのかが注目されることになりそうです。

日銀は円高を阻止するのは難しいものの、円安はどうにでも調整できると考えている節がありますが、今回のドル円の短期間の上昇、端的に言えばこの1か月で10円以上上昇した動きを見ると、さらに上値を目指すことになっても口先介入では簡単に制御できなくなる危険性に直面していることを理解してトレードする必要がありそうです。

今回の日銀の政策姿勢に加えて指値オペの連続実施のおかげで市場には一定の流動性が示現したことは確かですが、日銀が世界に先んじてこんな形で流動性確保に寄与する必要があるのかについては疑問の残る状況となっています。