米国は、5月にFRBがFOMCで利上げを0.5%開始しただけで株式市場にも債券市場にも凄まじい影響がではじめており、6月以降さらなる利上げとQT・資産縮小の開始で果たして相場がどうなってしまうのか非常に危惧する声が囁かれ始めています。
実際まだ始まったばかりのインフレ対策の利上げでこれだけ大きな相場の下落がでてきているので、先行きを心配する声が高まるのは非常によく分かります。
そんな中で、一部の投機筋はすでに米国がリセッション入りすることも想定し始めており、相場にもそうした傾向が見え始めています。
さすがにFRBの利上げやQTが始まったばかりなので、このタイミングでリセッションを気にするのはまだ早いとは思いますが、先行きを一刻も早く取り込もうとするのが金融市場のため、こうした動向にも目を光らせる必要がでてきていることがわかります。
すでに米国債は反発をはじめている
5月に入って米株が大きく下げたことから、リスクオフで米債に一時的に資金が流れ込み金利が大幅に下落して、それまで10年債あたりでも3%を明確に超えてきていた金利は一気に2.8%以下に低下を始めました。
米債イールドカーブで見るとよりフラット化が進んでいることがわかります。
ただ、この下落は安全資産への逃避ということだけではなく、すでに米系のヘッジファンド勢の一部が米国経済がほどなくしてリセッションに入り、FRBの利上げサイクルが想定以上に早く終了し中間選挙後は早ければ来年3月にも利上げ中止、さらに利下げへとシフトするのではないかという観測を強く持ち出しています。
さすがに年明け早々に利上げ終了というのは少し気の早い見方ですが、多くのファンドが来年末まで利上げ継続することはなく早めに終了するのではないか、といった観測を強めていることはどうやら事実のようです。
実際3カ月物の担保付き翌日物調達金利、いわゆるSOFR先物は利上げを想定して売り越されてきたものが急激に減少しており、フェデラルファンド(FF)の先物も買い越しに転じています。
もちろん一部のヘッジファンドが先行きを見越してこうした動きにでているのが現状のため完全な市場のトレンドとはなっていませんが、いくつかのファンドはこのシナリオに賭けていることも強く感じられる次第です。
FRBも主要な経済アナリストもリセッションを否定するが現実味は高い
リセッションに関してはFRBパウエル議長も頑なに否定しており、経済アナリストもそうした発言を擁護するような観測を出していますが、現状では完全に否定できるような状況ではなく、実際にリセッション入りが確認されれば当然利上げどころの騒ぎではなくなることが予想されます。
これが完全に観測されるまでにはまだ相当な時間がかかると思われますが、ひとたびリセッションとなり利上げが中断となった場合には、為替でここ3か月あまり大きく上昇してきたドル円が反転下落に追い込まれることもあり、注意が必要になります。
また米国は過去40年間、自国の景気が不況になるたびにドル安を強行してきているので、現状中間選挙をひかえてインフレ対策のために黙認してきたドル高を一転してけん制し、真逆のドル安政策に転換する可能性も高まるところです。
いずれにしてもリセッションがどこで明確になるのか、あるいは回避できるかによってドル円の命運も相当異なりそうで、いつの間にかドル高から一転してドル安円高が示現することも想定しておく必要がでてきています。
株式相場は現実よりもかなり早く経済、景気の変化を相場の価格に投影することになるため、為替相場がこの動きを早めに捉えることになると、ここからドル円が大きく上昇しなくなることもひとつの可能性として考えるべき状況になってきています。