5月後半から市場はインフレが既にピークになっており、FRBは6月7月と50ポイントの利上げを行ったあと9月のFOMCで一旦利上げを停止して様子をみることになる、という極めて楽観的な予測が広がり、米株には大きな買戻しが入り米債金利は低下、一旦相場の大底をつけたかのような動きになりました。
しかしその状況を大きくひっくり返す発言をしたのがブレーナードFRB副議長です。
2日ブレーナード氏は米金融専門局CNBCとのインタビューで、現時点でのデータに基づいて、市場が6月と7月に0.5ポイントの利上げを織り込んでいることは妥当な道筋だというのが今の私の見方だとこの2回のFOMCでの50ポイント利上げを容認、さらに休止するという可能性は現時点では非常に低いと思われ、インフレを当局目標の2%に戻すためにやるべき仕事がまだ多く残っているとして9月に利上げ一旦停止を行うことを明確に否定しました。
そもそも米系金融機関のアナリストによる9月利上げ一旦終了観測というのは、5月のFOMC議事録を見ての極めて希望感が強い予測であっただけに、これが明確に否定されたことで相場の状況は一変することとなります。
株価は一瞬大きく下落したあと持ち直す動きになりましたがその後はやはり下落に転じており、5月中盤が大底であったという見方は必ずしも正確な観測ではなくなりつつあります。
またこのコラムでもすでにご紹介しているように6月からFRBの資産縮小がはじまっており、それだけでも米債金利はまったく下がらない状況を示現するようになっています。
支持率低迷のバイデン政権は思いきりインフレ対策に舵をきった可能性
民主党からの強い信任を受けている事実上影のFRB議長などとも称されるブレーナードが徹底的にインフレファイトすることを宣言したことはかなり重要視されています。
その前に5月末バイデン、イエレン、パウエルの3氏が集まった会談後、なぜかイエレンが登場して、過去にインフレ見通しで自身が間違っていたとの認識を示し、物価上昇を抑制することはバイデン大統領の最優先事項で、バイデン大統領がFRBのインフレファイトの行動を支持しているとのある意味異例な発言を繰り出しています。
さすがにFRB議長がインフレ見通しで謝罪することはまずいということになったのか、イエレンが一身に問題を引き取った格好です。
ドル円はFOMC前にどこまで上昇できるかに注目
ドル円は3日の米国雇用統計ではNFPが前月比39万人増と、市場予想の32万5000人を上回る伸びとなったことから素直にドルが買われる展開となり、ドル円は130.983円という131円すれすれまで上昇することとなりました。
5月末から実に4円近い上昇となりかなり意外な状況ですが、週明けこれがどこまで上昇できることになるのかが大きな注目点となります。
131円台は実需の売りも相当出てきており、来週のFOMCの前に135円まで上がるのはかなり難しそうですが、131円台を超えて132円辺りまで上昇する可能性は否定できず、はたしてどこまで強含むことができるかが大きな焦点となります。
ちなみに10日には毎月懸案となる5月のCPIが発表されますが、FRBが全力でインフレに立ち向かい少々の株価の下落は考慮しないとなると、この数字が多少下がってもあまり影響がない可能性もありそうで、結果を見た相場の動きはかなり微妙な状況です。
基本的に17日早朝のFOMCの政策発表までは上下動の激しいレンジ相場となることが予想されます。
ユーロは9日のECB理事会の政策発表に注目
6月9日にはECB理事会が開催され、資産購入プログラムの終了決定と次回7月会合での政策金利引き上げが予想されていますが、声明文やラガルドECB総裁記者会見で50bpの利上げ可能性が強調されない場合は逆に失望からユーロ売りが出る可能性がありそうで、こちらも相当注意が必要です。
ラガルド総裁はECBのブログで自らの判断から先行きを示唆することをかなり書き込んでおり、市場の織り込み度は高くなっていますが、ECBによる大幅利上げ観測後退は欧州債利回りの低下にも繋がることから、はたしてここからどうなるのかに大きな関心が集まっています。
全体的な相場で見るとセンチメントは日々変化しており、市場の事前予測と主要中銀の動きに差が見られるようになってきています。
これがそのまま政策発表で示現すると失望売りなども巻き込み、厳しい相場が展開される可能性も高く、くれぐれも相場を事前に決めつけることのないトレードが必要になるでしょう。
難しい相場は依然継続中です。