国内ではすっかり自民党と旧統一教会との不可解な関係が大きな問題になりつつありますが、その陰で今、米国下院議長のペロシがオーストラリア、アジア各国を歴訪するのに伴って台湾を訪問する話が突如顕在化しつつあり、いきなり米中の軍事衝突の引き金になるのではないかという緊張感が高まりつつあります。
8月1日時点では台湾の訪問は明確にスケジュールに入っておらず、このまま回避することになるのか電撃訪問ということになるのかはまだはっきりしていません。
いずれにしてもなぜこのタイミングでこういった話が出てきたのかは分かりませんが、台湾への電撃訪問が実現したあとの中国側の動きが一体どうなるのか非常に気になるところです。

Photo Bloomberg

米国サイドはペロシ下院議長による台湾訪問の可能性について、大統領職の継承者であるペロシの海外渡航は米国の国家安全保障に関わる問題としているようですが、議会と米国世論に押されてペロシが台湾訪問をすることを簡単に止めることはできないようで、ここからの進展が非常に危惧されます。
バイデン大統領自身はペロシの台湾訪問を否定する見解を打ち出していますが、本人は新型コロナに再感染して自宅で療養することになっているため制御する手立てを失っているようで、すべてはペロシ自身の判断ということになりそうです。
7月28日には米中の高官による電話会議が実施されていますが、この席上でも中国は相当なけん制発言をしており、果たしてペロシがそれを押し返す形で訪問を実現するのかが大きな注目点となっています。
実際に実現するとなれば恐らく8月第一週に行われる可能性が高く、今週はこれに伴う為替の動きを常にチェックする必要がでできています。

中国は軍隊を中心として猛烈に米国に反発

ペロシは7月21日の記者会見においても中国が台湾を恫喝し続けている状況下で台湾に対する支持を示すことは極めて重要としていますが、さすがに自身の安全上の考慮からどのような外遊計画になるかは事前に公表しないままアジア歴訪をスタートさせています。
中国サイドはこの状況に腹を立てているようで、米国が一方的かつ強引にペロシ訪台を敢行するとしたら中国は断固たる措置をとって、国家主権と領土の完全性を断固として守る、それによるすべての結果は完全に米国の責任である、と中国外交部の報道官がまくしたてており、さらにそれを超える勢いで中国国防部はペロシの台湾訪問を中国軍が見過ごすことはないと強硬な発言を繰り出しています。

米国は中国に歩み寄ろうとしているのか、トランプ政権時のように対立を激化させようとしているのか今一つわからないところもあり、その中で中国の逆鱗に触れるような事態に陥れば東アジアの地政学リスクは一気に高まることとなるため、日本にとってもかなり重大な局面になっていることを感じさせられます。

良識ある両国ならまさかの事態はないと思われるが戦争は出合がしらで起こるのが常

こんなことで米中が戦闘的な状況に陥るとは考えにくいところですが、ロシアのウクライナ侵攻も当初は行われない脅かしだとされていたものが本格戦争に突入してしまったため、楽観的な観測は非常に危険な状況です。
とくに現場の軍事衝突は理性を超えて出合がしらに勃発することが十分にありうるだけに、何かが起きると相場は凄まじいリスクオフの嵐に見舞われることも想定しておく必要がありそうです。

8月相場は市場参加者が夏休みで激減しはじめていて、ボラティリティのないところでいきなりリスクオフとなると相場はオーバーシュート気味に展開することが予想され、かなり気をつけなくてはならない時間帯に入りそうです。
具体的には日本が巻き込まれないかぎりドル円の初動はドル安円高にシフトするものと思われますが、クロス円も同様の動きをすることが予想されるだけに円高が想像以上に進むリスクも考えておく必要がありそうです。
中間選挙に向けてとにかく支持率が下落中のバイデン政権と、それを支えるペロシ下院議長は国民の支持が得られるような派手な動きを選択しようとしていますが、必要以上に中国を刺激することでまさかの軍事衝突などが起きないことを切に願いたいところです。