毎年年末になると、金融メディアの企画でドル円が今年上昇するのか下落するのか2023年末にはいくらで終えるのかといった興味本位のアナリストへの予測依頼があり、様々な見通しが登場することになります。
普通に考えても一年後に相場がどうなっているかを予測するのは非常に難しく、仮にそれが的中したとしてもそこに至るまでにずっとトレンドをもって上昇、下落するのか、あるいは一旦大幅下落して最後に上昇するのかといったプロセスが正確に当てられなくては、年末の価格水準だけ的中できてもトレードにはほとんど意味のない情報になってしまいます。
そういう意味ではこうしたアナリスト予測が毎年繰り返されるのかわかりませんが、今年に関してはそれぞれのアナリストの予測がかなりバラツキ始めており、プロが見てもドル円は上昇するのか下落するのかわからないところに佇んでいる状況なのが唯一興味深い状況といえます。
FRBの利上げは今年も継続し、パウエル議長はあげた金利は簡単に下げないと豪語しており、日米の金利差は年央に向けて益々大きくなることが予想されます。
ただ一方で日銀も総裁が交代し緩和政策に見直しが出る可能性を指摘するアナリストは非常に多くなっており、ドル円は単なる2国間の金利の差だけを材料にしては動かない可能性がでてきています。
まさにそれこそがアナリストのドル円先行き見通しを渋らせていて、ここからどのように動いていくのかを予測することを非常に難しくさせています。
FRBは利上げを停止し利下げに動くという根強い見方がいまだに存在
昨年、市場では何度となくパウエルプット、つまりパウエルFRB議長が利上げを一旦停止し早い時期に利下げに動くといった妙な楽観論が広がる時間があり、そのたびに米株は上昇、米債金利は逆に下落して強いトレンドがでていたドル円もその都度押し戻されるという局面がありました。
今年の相場ではすでにFRBのFF金利は5月辺りまでに5.25%まで上昇することがほとんど確定的になってきていますが、それでも市場ではインフレの収まりを背景にしてそこまで利上げしないうちに一旦停止があり、逆にまたしても早いうちに利下げを行うことでFRBがリセッション対策に出るのではないかといった見方が根強く残されています。
これこそがドル円が再上昇をはかり150円に接近するという見方を抑制する大きな材料となっており、春先まで上昇してもその後は下落に転じるといった見方の根底にあることがわかります。
パウエル議長自身はとにかく徹底してインフレ対策に臨み、簡単には利下げに転じるようなことはないとかなり強気の発言を繰り返していますが、市場はリセッションが始まれば利上げを行うことはできなくなり、逆に株価の大きな下げに直面して結局パウエルプットが出現するのではないかと読んでいる向きが非常に多く存在する点が相場の先行き判断を難しくしています。
長く緩和が続いてきただけに市場に問題が生じればまたFRBが何とかしてくれるというかなり甘い考えが市場に行きわたってしまっているようですが、FRBが本当にそんな動きを見せるのかどうかはまだ全くわからないのが実情で、ある程度相場が経過してみないとその方向感は掴めないのかもしれません。
日銀の政策変更の可能性もドル円の上昇を阻む要因に
FRBとは別に市場で俄然注目を浴びるようになっているのが、日銀黒田総裁の後継者が決定した段階で早くも緩和に対する政策変更が飛び出すことになるのではないかといった強い憶測です。
日銀自体は確かにYCCの10年債上限金利を0.25%から0.5%にいきなり引き上げており、どんなに利上げではないと弁解しても市場には確実に利上げの一種であると理解されてしまったようで、早ければ1月の日銀政策決定会合でも黒田総裁退任前にさらなる緩和巻き戻し策が飛び出すのではないかといった観測が日に日に高まりを見せています。
すでに1月中には次期総裁も内定するといった報道が出回っており、ますます市場参加者の詮索は強まるばかりで米国と本邦の金利差だけでは相場が動かなくなりつつあることを実感させられます。
まさにこの2つの要因がプロの為替アナリストをしてもドル円が上に向うのか下に下がるのかを判断することができない状況に追い込んでいるようで、とにかく勝手な方向感の断定は慎み、相場が実際にどう動くのかを細かく観察することでエントリーしていく相当な慎重さが求められることになりそうです。
昨年のドル円相場は3月から明確な上昇トレンドが示現し、それをフォローして順張りでついて行くことがもっとも利益獲得の早道になりましたが、今年の相場はかなり様々な要因に降らされて上下動を伴う相場展開になりそうで、順張り対応だけでは稼げない時間も多くなりそうです。
これを正確に見計らうのはそれなりに大変なことになるので、レベル感で安易に取引するのではなくしっかり相場のポイントを把握していくことが重要です。