今年8月23日、24日の両日南アフリカで開催されるBRICSサミットでBRICS新決済通貨が発表され、かなり早い時期にそれが利用開始されるのではないかといった憶測が飛び交い始めています。
ウクライナ戦争が勃発して以降米ロの対立は激しくなり、通貨領域では中国も参入してドルやSWIFTに依存しない新たな決済システムと共通決済通貨を早期に開発し利用開始することが急務とされてきましたが、中国人民元ではなくBRICS通貨を発行・利用することでこの問題を解決させようとする動きが顕在化しています。
このBRICS新通貨はBRICSに加えサウジアラビア、中東、ユーラシア、アフリカ、ブラジルなどの国々が参加することが決まっており、すでに41カ国がその利用を検討中とのことです。
この共通通貨は金本位制に基づき、保有する金にあわせて発行されるという本来貨幣がもっていた厳しい規律に基づく運用となることから、ある意味米ドルよりも信頼性の高い通貨として機能することが予想されはじめています。
外貨準備金としても機能させることからこれが実現すればドルと米債需要は激減か
このBRICS通貨は参加国間での決済通貨として機能することになるため、従来のSWIFTを使った米ドルベースでの送金決済の仕組みを使わずに決済することが可能となるのはほぼ間違いないですが、参加国の中で米ドルに変わる外貨準備金として機能するように設計されることになりそうです。
従来外貨準備といえば米ドル、それを維持するために米債を購入することが市場のスタンダードでしたが、これが一気に崩れ始めることも予想されており、米ドルの基軸通貨の座からの転落は市場があらかじめ予測していたものよりも圧倒的に早く実現してしまいそうな雰囲気を醸し出しています。
とくにここから深刻になるのは31兆ドル超の多額の債務を抱える米国となり、借金の返済は新たな米債の発行でまかなうという自転車操業を余儀なくされている中で、ロシアも中国もその他国もほとんど米債を買わなくなるという事態に見舞われたときに国家財政をどう維持していくかは凄まじく大きな問題として浮上してくることが予想されます。
米国は日本に対してより多額の米債購入を迫ってくることになると思われますが、一国で購入金額の増額には限界があり、その他世界から総スカンを食ったときに果たして米債がどうなってしまうのかにも関心が集まりそうです。
サウジアラビアと周辺の中東諸国が石油の売買にこの共通通貨を定常的に使いはじめれば、これまでドルでしか決済できないことで優位性をもっていたペトロダラーの座もいとも簡単に瓦解することになりそうで、このBRICS新通貨のローンチは為替市場に大きな影響を与えることになるでしょう。
中国の加入で一帯一路参加国でも利用されいきなり利用国は200カ国超の可能性も
中国は当初米ドルに対抗する決済、外貨準備通貨として人民元を主体に考えてきていますが、彼らがすでに保有している決済機能をこのBRICS共通通貨に利用することとすれば一帯一路参加国家152ヶ国が即座に参加することも考えられ、スタート当初から200カ国近い国々がこの通貨システムをいきなり利用することも想定されはじめています。
西側金融機関のアナリストたちもこうした動きがあることは察知していたようですが、依然として米ドルが基軸通貨として機能する時代は向こう10年は続くのではないかと楽観的な見通しをもっていたことから、BRICS新通貨の加速度的なローンチは全く想定できていないようで、これがもし本当に今年の8月末から機能し始めることになれば為替と米債の市場には激震が走ることが予想されます。
とくにこの通貨の導入をきっかけに金本位制が市場に返り咲くことになれば、輪転機を適当に回していくらでも需要に合わせて印刷してきた米ドルの価値は劇的に後退し一気にドル安の市場が形成されることも考えられるだけに、BRICSサミットでどのような決定が下されるのか、またそのプランの実行のマイルストーンがどうなるのかについては相当注視しなくてはならない時間が継続しそうな状況です。
またこのBRICS通貨は仮想通貨として導入される可能性もあり、こちらも実現すればビットコインをはじめとする既存の仮想通貨にも相当大きなダメージを与える危険性が高まりつつあります。
本邦のメディアだけ見ていると世界は米国中心にG7が結束して揺るぎない実現を継続して行くという錯覚に見舞われていますが、もはや現実にはG7は相当限られた国の結束に過ぎず、世界を動かしていく勢力にも大きな変化が訪れるリスクを相当意識しておかなくてはならないようです。