例年、為替相場は年初に前年までとは違った動きを見せることが多く、見極めが非常に困難になりがちです。
今年の為替相場も、特にドル円において先週後半から、上に行こうとする動きが強まっては下がるといったトリッキーな展開が続いています。
短い時間足で利益が出たらすぐに利確するという姿勢でない限り、投げと踏みの応酬に巻き込まれた方も多かったのではないでしょうか。
年初から週末までの動きをご覧いただくと分かる通り、年末には140円を割る勢いだったドル円相場は、ほぼ1日1円の勢いで上昇に転じています。
金曜日に発表された12月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比21万6000人増と、市場予想の17万人を上回り、同時に発表された賃金も引き続き底堅いペースで上昇し、FRBがこの3月に利下げを開始するという観測を大きく揺るがす結果となりました。
ドル円は大きく上昇し、146円の一歩手前まで上値を試す展開となりましたが、その後発表された12月の米ISM非製造業景況指数が 50.6と予想の52.6を下回ったことを受け、ドル円は一時143.92円まで下げ幅を広げるという、完全な行って来い相場となりました。
その後は144.600円水準で小動きとなり、年初第一週の取引を終えています。
アルゴリズム主導で動く相場であったためか、指標の結果に翻弄される相場展開となり、裁量取引を行う個人投資家の多くが振り落とされる状況になってしまったようです。
しかし冷静に考えてみると、2つの指標がたった1時間半の間に2円も上下動するほどの影響を与えたとは考えにくいため、週明け以降の相場にもリスクが残ることが予想されます。
週明けのドル円はさらに上を目指す可能性も
テクニカル的に見ると、一目均衡表で日足のドル円が厚い雲を控えてるため、そう簡単には上昇しないことが予想されます。
しかし、昨年末まで前のめりで織り込まれていた3月からの利下げがワークしないとなれば、150円台までのドル高が再燃する可能性もあります。
今年前半のドル円は円高にシフトするものと思われていましたが、年初第一週だけでもこの戻り調子であることを考えると、この先何があってもおかしくはありません。
143円から147円あたりが順当な上下幅と予想されますが、オーバーシュート気味に展開するのは相場の常ですから、それを超える動きになった時も適切に対応できるよう準備しておくことが大切です。
新年度を迎え、海外投機筋による円キャリートレードが再開される可能性もあるため、引き続き神経質な相場展開となることが予想されます。
堅調推移に見えるユーロはドル次第でまた下落の可能性も
ユーロドルは、12月28日に5か月ぶりの高値となる1.1141をつけましたが、年明けにかけてはドルが強さを回復したことから下落に転じており、週末は雇用統計の結果も絡んで一時1.0877まで急落する展開となりました。
ECBの利上げに対する市場予測は、FRBに比べかなり低いことから、FRBの利下げ予測がさらに後退すればユーロドルが再度下落に転じる可能性もあります。
また、FRB高官によるタカ派的な発言によってもドルは強含むため、ユーロドルは相対的に下落目線となることが予想されます。
断定はできませんが、米欧の中央銀行における政策コントラストがそのまま相場に現れることを覚悟しておく必要がありそうです。
今週は8日が日本では休日となり、11日には日銀支店長会議と米国の消費者物価指数(CPI)の発表、12日には卸売物価指数(PPI)の発表などのイベントが控えています。
1月の日本銀行金融政策決定会合では、植田総裁が能登半島地震による経済への影響を考慮し、金融政策の正常化を先送りするのではないかとの見方が大勢を占めています。
いずれにせよ、為替相場のセンチメントは年明けから大きく変化し始めているため、値動きが非常に想定しづらい状況となっています。
方向感がわからないときには、無理をしてエントリーしようとはせず、自信が持てるタイミングだけを見計らい相場に臨みたいものです。