いよいよ今年1月から、新型NISAがスタートしました。
新型NISAに対する関心は高まりつつあり、一部のネット証券では新規加入の申込者数が前年同月に比べ3倍になったというニュースもあります。
年明けから申込が始まったばかりにもかかわらず、投資家たちは早速投資を始めており、中でも人気なのは、驚異的な値上がり実績を持つ「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型株への投資です。
現状では、国内における新型NISAの利用者がどれだけ米ドルに転換して海外株への投資を行っているのかははっきりしていませんが、1月だけでもすでに2兆円規模のいわゆる「円キャリートレード」が行われていると見られています。
その勢いは今後さらに加速していくことが予想され、年間ベースでは16兆円規模にもなるという予測を立てる証券会社もあるほどです。
実数の把握にはもう少し時間がかかりそうですが、多くの個人投資家が海外株を購入するため円を売りドルを買う動きに出た場合「買い切り玉」となり、投機筋のようにすぐに反対売買をしない分、ドル円は上昇を始め息の長い相場になることが予想されます。
年明けから見られるドル円の上昇も、NISA絡みでのドル買い需要と見ると納得がいきます。
個人投資家が考えるべきは円高シフト時のリスクヘッジ
足元では対ドルで円安が進んでいる状況にあるため、個人投資家の多くは外国株や外債を購入する際に、為替でヘッジをすることはないと思われます。
しかし、この先円高が示現するようになると、投資している海外株、債券などの利益は、日本円にすることでシュリンクすることが考えられます。
金融機関などは、円高時はドル円の円買いを行うことで利益の減少をヘッジする手段を講じるのが定石となっていますが、個人投資家もそのようなヘッジ買いを行うことになるのかが気になるところです。
投資の途上で円高が進行した場合、円買いを行うためには外国株への投資額と同額の資金が必要になりますが、FXでレバレッジをかけ利益を稼ぐという方法もあります。
ただ現状では、円買いによるスワップ金利のコストも馬鹿にはならず、単純な円買いにもリスクが付きまとうため、海外投資を行う際は事前対策をしっかりと行っておく必要がありそうです。
新型NISA導入で個人投資家による円キャリートレードが加速する見込み
国内の個人投資家の場合、もともと保有していた円を売ってドルを買い、海外株や外債投資を行う訳ですが、これは広い意味での円キャリートレードに該当します。
今後口座開設が一巡した段階で、この動きはさらに加速することが考えられます。
今のところ為替相場への大きな影響はありませんが、この先国内の個人投資家によるドル買いの動きが強まれば、当然ドルは上昇し円高方向へは振れにくくなってしまいます。
逆に円高が進んでも、その流れに乗ろうと円買いが行われる訳ですから、投資規模が大きくなればなるほど為替相場には応分の影響がでることが予想されます。
現状では国内株も活況を呈しており、日経平均もバブル崩壊後の最高値を更新中です。
国内株だけを売買している分には、為替はあまり関係がありませんが、海外投資家は日本株を買うと同時にヘッジで同額のドル円も買うことが多いため、この先の日本株の行方にも大きな注目が集まりそうです。
ただし日本株も米株も、高値を更新したあたりで新型NISAの導入が始まっているため、投資のタイミング次第では、高値で買って結局は塩漬けという状況になる可能性もあります。
積み立てNISAであればリスクはそれなりに分散されるものですが、本来、株は底値で買って高値で売り抜けることが基本となるため、買うタイミングについてはじっくりと見極める必要がありそうです。
それにしても日本の個人投資家による投資行動がドル円に影響を与える時代が到来したことは、昔の国内相場状況を思うと隔世の感を禁じ得ません。