今年11月に行われる米国大統領選の候補者選びが始まりました。
民主党は、現職のバイデン大統領が立候補を表明していますが、支持率不足から新しい候補者にバトンタッチする可能性も高まりつつあります。
一方の共和党はトランプ前大統領が、州政府の司法により、立候補そのものへの妨害を受けている状況ですが、党内でも順調に支持を集め最有力候補となっています。
トランプ前大統領は、共和党候補指名争いの初戦となるアイオワ州の党員集会で圧勝を収め、改めて共和党候補としての圧倒的な強さを見せつける結果となりました。
現職大統領でありながら、支持率を落としつつあるバイデン大統領と比べると、トランプ前大統領ははるかにエネルギッシュな存在と言えます。
在任期間中には他国と戦争をしないというスタンスで評価を高めただけに、今こそ大統領選に返り咲かせようという党員の強い思いが感じられます。
今回、アイオワ州で行われた党員集会はほんの手始めで、本戦は3月からということになりますが、米系金融機関のアナリストによると、予備選でのトランプ前大統領の圧勝がドル高を主導するものと見られ、強い米国をもう一度というトランプ・キャンペーンが、為替にも大きな影響をもたらすことが予想されています。
2016年には、大統領選挙もいよいよ終盤という時に、強い米国を口にするとドルが上昇するという場面がありましたが、今回はまだ予備選が始まったばかりにもかかわらず、すでに相場への影響が出ている点が気になるところです。
仮にトランプ前大統領が圧勝した場合、米国内でドルを買っているのは誰かと言うことが気になるところですが、機関投資家があり得ないとなると考えられるのは、ファンドか個人投資家と言うことになります。
トランプ前大統領の出馬を巡り二分する米国
バイデン大統領は、健康上の問題を理由に出馬を断念するのではないかとの見方もあります。
以前、専用機のタラップを上がる際につまずいてしまうというハプニングがありましたが、81歳という年齢を考えると、この先4年の任期を全うすることができるのかという疑問が残ります。
また体力的な問題のみならず、認知症が疑われる発言が目立つようになってきたため、影の選挙対策委員長であるオバマ元大統領が重要な判断を下す可能性もあります。
仮にバイデン大統領が出馬を取りやめても、後任候補者次第では引き続き民主党が政権を維持することができるものと見られます。
しかし現職のカマラ・ハリス副大統領も、人気が決して芳しいとは言えないため、民主党員が納得する新たな候補者を擁立する必要があります。
一方のトランプ前大統領は、共和党配下における州での予備選は順調であっても、民主党の息のかかった州では司法に邪魔され予備選に参加できないという厳しい状況が続きそうです。
連邦裁判所で訴えが棄却され、最終的にトランプ前大統領の出馬が認められないとなれば、当然共和党支持者は納得できるはずもなく、米国は完全に二分してしまう可能性が高まります。
これまでの選挙戦でも、激しい戦いが繰り広げられてきましたが、候補者を司法判断で選挙戦から排除するというやり口は明らかにやりすぎであり、これが結果にどう繫がるのかが注目されます。
大統領選の結果に委ねられるウクライナ、イスラエル戦争の行方
民主党政権下では、ウクライナとイスラエルのふたつの戦争を、バイデン大統領自らが止めに入ろうという動きは一切行っておらず、34兆ドルという膨大な連邦債務を抱える中、米国が国に金銭的支援をすることはもはや不可能な状況に陥っています。
ここのところウクライナのゼレンスキー大統領は、スイスで開催されているダボス会議において、今後ロシアとどう向き合っていくのかを演説するとともに、米国以外の様々な国を巡っては金銭的支援を懇願している状況です。
これもトランプ政権が誕生すれば、あっさり解決する可能性があり、地政学リスクもまさに政権次第であると言えます。
今回の大統領選挙では、予備選の段階から候補者が地政学リスクをどう考えるかによって、金融市場に大きな影響が出そうな展開となっています。
足元で、市場参加者たちの関心はFRBの利下げだけに向かっていますが、大統領選という全く異なるテーマでのリスクもしっかり認識しておかなくてはなりません。
そういう意味では、今後想像を超える激しい相場になることも覚悟しておく必要がありそうです。