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日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、初めて3万9000円の大台を突破しました。

証券会社からは歓喜の声が上がり、長年の呪縛から解放された市場参加者たちも多く、日経平均はここからさらに上昇するとの期待が高まっています。

しかしその一方で、株価だけが調子よく上がっている現状に懐疑的な投資家も多く、先行きは依然不透明な状況となっています。

ただ、足元の相場状況を1989年のバブル相場と比較することで、先行きを見通すヒントを得ることができます。

 

バブル期の最高値相場は円高と不動産バブルが景気を押し上げ

バブル景気の発端は、1985年に日米欧の財務相が終結し締結されたプラザ合意に始まったとされています。

プラザ合意はドル高是正のための政策措置であり、この決定によりそれぞれの通貨を買い支えるための為替介入が行われ、ドル相場が急落し他の通貨が相対的に上昇する事態となりました。

当然ドル円も円高方向へと大きく動き、国内で異常な不動産バブル相場が発生し、その結果、日経平均も高騰を繰り返し、1989年の年末には3万9000円の一歩手前まで上昇する展開となりました。

その後もさらなる上昇が期待されましたが、市場参加者の期待に反し、1990年の年初から相場は一転、この時期は不動産融資に対する国の総量規制が始まったことにより、相対取引の性格が強かった不動産市場が崩れ出しました。

日経平均は、1990年の3月に3万円を割り込むほどの下落となり、一時は下げ止まりを見せる動きがあったものの、下げは続き1991年7月には15,555円まで半値押しの下落となりました。

ただ、当時のバブル相場は景気がかなり好調であったため、株価と不動産は大幅に下落したにもかかわらず、景気が急速に落ち込むことはありませんでした。

日経平均株価が急激に上昇したと言っても、全ての株価が上昇したわけではなかったため、非常に特殊な相場展開ではありましたが、サラリーマンの給与や賞与も大幅に上昇し、個人消費にも大きく寄与したことから、今では考えられないほどの好景気をもたらす結果となりました。

今回の日経平均上昇は国主導の金融緩和と円安が要因

最近の日経平均の大幅上昇と史上最高値の更新は、AI市場による米株相場の牽引が発端となり、それに連動する形で引き起こされた結果と言えます。

日本では金融緩和の継続が見込まれ、円安もすでに150円台にまで進んでいることや、米株がすでに割高水準に達していることなどが複合的に影響し、日経平均を3万9000円まで上昇させる要因となっているようです。

今回の状況は89年のバブル相場とは全く様相が異なるため、日銀がインフレ対策で利上げを行わずにこのまま低金利と円安が継続けば、日経平均もさらに上昇する可能性が高く、短期間で急激に相場が暴落する可能性は低いものと見られます。

現在、日経平均指数の寄与度が極めて高いファーストリテーリングやアーム保有のソフトバンクグループなどの銘柄は、市場で流通している売買可能な浮動株が限定的です。

それにより、海外から猛烈な買いが入れば指数への影響も大きく、短期間で大幅に上昇することになるため、日銀が政策変更をしない限り、4万円や4万5000円といった水準に到達する可能性はかなり高くなります。

ただし、足元の国内経済は完全にインフレにシフトしており、GDPは四半期ベースで二期連続のマイナスとなっているため、スタグフレーションの中で株価のみが上昇するという歪んだ状況となっています。

この状況に、円キャリートレードの巻き戻しなどの特殊な事情が重なると、株価と為替が突然下落する可能性も考えられます。

今後は機関投資家によるリバランスから日米株価ともに値を下げる可能性も

一旦は3万9000円台まで到達した日経平均ですが、ここから月末に向けては、国内外で分散投資を行っている機関投資家が上昇しすぎた米株と日本株を売却し、ポートフォリオの割合を調整するリバランスを行うことにより、一定の売り圧力が生じることが予想されます。

ただし、これはあくまでも分散投資配分の修正から生じる売りであるため、3月の相場でさらなる大きな売りが現れるとは考えにくく、むしろ決算時期であることから、高値を維持したまま年度末を迎える可能性が高まっています。

しかしその先には、米株崩れの問題があり、過度な上昇が何かをきっかけにして急激に崩れ出した場合、当然ながら日経平均も影響を受けることには注意が必要です。

このような短期間における高騰相場で一旦利益を確保すると、強気になって更なる買いに向かいがちです。

しかし、一方で大きな損失が発生するリスクも高まるため、その場の勢いに流されず、冷静なトレード判断を行っていくことが重要です。