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9月7日からいよいよ中南米のエルサルバドルが法定通貨の米ドルに代わり、ビットコインを法定通貨として利用し始めました。

これは世界初の試みであり、実験的なものではなく実際に利用するということで一体どういう風になるのか非常に注目を浴びています。

初日は技術的なトラブルからうまく使えないといった話や、コインベースのレンド募集にSECが難色を示したことなどが重なってビットコインは一時的に17%下げるという状況に見舞われましたが、なんとか利用は開始されたようです。

そもそもエルサルバドルとは

エルサルバドルは日本では中南米の小国ぐらいにしか認識されていませんが、人口は610万人で国土は東京都の半分程度、GDPは米ドルベースで日本円にして2兆4000億円前後で今年開催された東京五輪で日本が抱えることになった負債と同じぐらいの規模であることがわかります。

それにより一国で法定通貨としての利用が始まったといっても規模の小さいものであり、仮想通貨市場全体に大きな影響を与える取引額になるとは思えませんが、日常的に利用するということは少額決済もすべてブロックチェーンで処理するということになります。

これらは実質的に初めての試みとなり、本当に決済や送金にビットコインが使えることになるのかどうかが大きな注目点となります。

これまでビットコインの送金実需は危ない案件ばかり

ビットコインは誕生してからすでに12年近く経過していますが、その間この市場に参入してきているのは投機のための投資家だけで、決済機能や送金機能が実装されているにも関わらずビットコインの実需といえばマネーロンダリングや反社会勢力間の送金、ランサムウエアの身代金利用などいいものではありませんでした。

したがって日常的に決済や送金の件数が増加した場合、理論的には利用可能なブロックチェーンが膨れ上がる決済「トランザクション」についていけるのかどうかに大きな関心が集まることになりそうです。

足もとではビットコインのマイナーが大挙して中国からほかの国に移動しつつありますが、ブロックチェーンが正確に守られることになるのかも非常に関心が高まっています。

投機商品が通貨として決済に満足に対応できるのかも大きな問題

また価格変動も大きな注目ポイントです。

もちろんエルサルバドルでは米ドルを利用する国民がいるので、ビットコインドルベースでいくらなのかということが常に問題になりそうです。

例えば直近のドル建て1BTCは昨日5万ドルで、一夜明けて換金したら4万3000ドルまで下落、ということが日常的に起きるので、エルサルバドル国内で固定のビットコイン価格を設定してもドルに換算したら儲かったり大損したりを毎日繰り返すことになり、激しい価格変動の中でこれが決済通貨として定着するのかどうかは大きな問題です。

ドル円で見ると年間通じて対ドルの価格変動率は10%ほどなので、輸出企業などにとっては見逃せない変動幅ですが、最寄り品の購入等を考えれば我慢できるくらいのレベルです。

しかしビットコインのように1日20%も価格変動が起きるとなればいつドルに換金するかで利益も全く異なるので、ハンバーガー1つでも固定BTC価格が本当に定着するのかどうかは大きな問題を生む可能性もあり、果たしていつまで続けるのかにも注目が集まりそうです。

このエルサルバドルにおけるビットコイン決済・送金の実証実験がうまくいけばこの先ビットコインの実需が拡大する可能性が考えられますが、逆にうまくいかない場合には決済通貨としての機能に大きななダメージを与えることになり、ある意味決済仮想通貨としての命運を分けることになります。

世界的には各国の中央銀行が発行する投機性を無くしたCBDCがここから次々と生み出されることになると思われますが、ビットコインがこうしたステーブルコインの決済機能を充足できないということになった場合、単なる投機性の高いデジタル資産という位置づけになることも考えられ、エルサルバドルでの利用の結果は想像以上に重要なものになりそうです。