先週のドル円相場は、米国の月次消費者物価指数(CPI)の発表を受け、予想外の下落を見せたものの、翌日のニューヨーク市場では全値戻しを果たし、週末にかけては156円に到達する勢いで上昇する展開となりました。
1日に1円以上値を下げ、それを短時間に取り戻すような激しい相場では、一歩タイミングを間違えれば、大きな損失を被ることになります。
日本のFXブローカーが開示した情報によると、先日実施された為替介入以降、相場に参戦した個人投資家の実に6割以上が損失を抱えており、しかもその額は決して少額ではないことが分かっています。
今回の介入により、介入相場は想像以上にリスクが高いことが明らかになる結果となりました。
説明がつかないドル円上昇のロジック
先週の相場状況については、多くのアナリストたちが見解を示していますが、経済指標の結果が悪いにも関わらず、ニューヨークタイムにドル円の買いが進む状況については解し難い状況です。
週明け以降も、まともな理由が見当たらないまま、投機筋による上値狙いの相場が展開されることが予想されます。
ただアップサイドリスクがあるものの、上限は160円となりよほどの材料がない限り、この水準を超えることはなさそうです。
逆に下値については、多くのアナリストが投入資金不足により再度為替介入が行われることはないと断言していますが、もし仮に介入が行われれば151円あたりまで押し込まれる可能性を意識しておく必要があります。
円安対策は引き続き為替介入の一択か
退官前に何としてもこの任務を成功させたい神田財務官にとっては、10兆円規模とも言われる今回の介入を160円台に値を戻し終わらせる訳には行きません。
2年前に3回にわたり実施された介入では、その後発表された経済指標の結果が悪かったこともあり、151円に値を戻すまで1年もの時間を要しました。
多くの市場参加者は、2年前の介入を成功と評価しましたが、今回の介入は現段階で失敗と評価されても仕方のない状況にあるため、今後更なる介入が実施される可能性はまだ残されています。
市場には、日銀が6月の政策決定会合で利上げを実施する可能性があるとのリーク記事が出始めていますが、それに対しての反応が薄いところを見ると、市場は今日、明日中にも0.25%の利上げを実施するくらいの政策変更を求めていることが窺える状況です。
神田シーリング(天井)が、いくらなのかは定かではありませんが、前回の高値を超えることだけは避けたるであろうことは間違いないため、157円を超えた時点で再度介入が実施される可能性もあります。
週明けの月曜、火曜は、米国の経済指標発表はないため、ドル円が上昇するとは考えにくい状況ですが、ニューヨークタイムはロジックを無視した上昇が発生しやすい時間帯であるため、様子を見ながら上値追いをしたほうが良さそうです。
ただ、157円を超えると上値追いのリスクが急激に高まるため、十分な注意が必要です。
テクニカル的に可能性の低い160円超え
足元のドル円相場を冷静に見てみると、すでに円安水準はある程度高まっているため、ここからすんなり160円を超えるとは考えにくい状況です。
また昨年7月にも、ドル円は何も材料がない中、自律的に反転下落しているため、このまま介入がなくても下落する可能性があることも意識しておきたい状況です。
相場の状況が不安定な時は、一旦市場から距離を置き、再度エントリータイミングを待つという判断も必要になりそうです。