米国のバイデン政権が何かと対中問題を取り上げる一方で、イエレン財務長官は外貨準備の一つとして引き続き中国に米国債を購入するよう働きかけを行っています。

しかし中国は、過去7か月で740億ドル相当の米国債を売却し、代わりとして大量の金を蓄え始めていることが明らかになっています。

中国人民銀行(PBOC)は、中国が2024年現在、1,590億ドルに相当する2,250トンの金を保有しているとの情報を公開しています。

まるで中国が金本位制に逆戻りしようとしているかのような数値ですが、米国経済から距離を置き、米国の覇権から離脱しようとする動きはBRICS諸国全体に広がっています。

このまま金保有が加速しドル離れが進めば、米ドルは基軸通貨としての地位を失うことになり、金とドルの価格にも大きな影響が及ぶことは間違いありません。

 

Data Bloomberg

 

米中間の貿易摩擦が続く中、中国のドル離れは一層鮮明になりつつあります。

ブルームバーグの算出によると、中国当局が1~3月に売却した米国債および連邦政府機関(エージェンシー)債は、過去最大規模となる計533億ドル(約8兆2000億円)にも達しています。

中国の資産を管理していると噂されるベルギーも、1~3月の間に220億ドルの米国債を手放したことが明らかになっているため、今後さらに米中関係が悪化する事態となれば、ドル離れはさらに加速することが予想されます。

先日バイデン大統領は、電気自動車(EV)、半導体、医療用製品、鉄鋼など、中国製品の関税率を大幅に引き上げるとの発表を行いました。

またトランプ前大統領も、11月の大統領選で再選した場合、中国製品に60%以上の関税を課すことを表明しているため、どちらが大統領になったとしても、中国との関係性は悪化の一途をたどることが予想されます。

BRICSはドルに依存しない独自の決済システムを構築中

BRICSプラスでは、早い段階で加盟国の共通通貨を発行するのではないかとの見方がありましたが、現時点でそのような動きは見られていません。

ただ、BRICSが発展途上国に対し、すべてのグローバル取引で米ドルを排除するよう促していることは確かであり、想像以上に脱米ドルの動きが加速していることが窺えます。

新たにBRICSに加入した5か国も、米ドルを弱体化させるためのBRICS通貨形成に積極的な姿勢を示しています。

またBRICS加盟国の間では、従来のSWIFTに依存しない決済送金の仕組みを確立する動きも進んでおり、原油取引をドル建てで行う「ペトロダラー体制」も今後消滅していく可能性が高まっています。

BRICSの資金規模、人口構成比はすでにG7以上

GDPベースで見ると、BRICSは資金規模、人口構成比ともにG7を大きく上回っており、存在感を増しつつあります。

BRICSは現在、BRICSプラスとして加盟国を増やし勢力を拡大していますが、このままグローバルサウス(進行・途上国)のほとんどが加盟することになれば、西側社会の連携は弱まることが予想されます。

BRICSが世界の多数派となった場合、為替市場にも想定外の影響が及ぶ可能性もあるため、引き続き世界動向を注視していく必要がありそうです。