為替市場にアルゴリズムが登場したのはかれこれ10年近く前になりますが、足元では主要通貨ペア取引の7割近くをAIが担っていると言われています。

導入当初は、AIが主流になれば人による裁量取引はすべて排除され、コンピューター同士が鎬を削る相場になるのではないかと心配されたものです。

しかし実際のところ、まだその状態には達しておらず、CTAファンドなどAI実装のアルゴリズムで積極的に売買する投機筋が、必ずしも利益を得ている訳でもなさそうです。

為替の世界において、AIはうまく機能するのでしょうか。

実はここ最近AIは、多数の要因を収集しそれらに優先順位をつけ分析するという為替相場予測の作業が、大の苦手であることが明らかになりつつあります。

相場の先行きを予測する能力は劣っているとされるAI

NVIDIAに代表されるAI半導体は、過去のチャートデータから現状に類似するパターンを短期間に極めて高い精度で抽出し、それを基に将来を予測することに長けていると言われています。

しかしその一方で、多種多様な要因を分析し相場の先行きを予測する能力は劣っていると言われており、一部のアナリストからは、為替市場におけるAIの活躍の場は、今後も限定的なものになるであろうとの指摘が挙がっています。

株式市場でも銘柄選択にAIを利用するところがあるようですが、個別銘柄の先行きを正確に予想することは難しいようです。

生成AIのスマホ実装により起こり得る変化

足元の米株市場では、NVIDIAの決算が好調であり、AI関連銘柄全般の上昇が顕著です。

AI半導体の普及と低価格化が急速に進む中、近い将来、全てのスマートフォンに生成AIが搭載される計画も浮上しています。

市場で大きな話題となっている生成AI(人工知能)とは、人の指示に従って文章や画像、プログラムコードなどを自動で生成する技術のことです。

この技術がスマートフォンに実装されれば、ユーザーはさまざまなタスクを効率的にこなすことができるようになり、社会にも様々な変化が訪れることが予想されます。

例えば、観光案内や多言語対応のサポート、資料作成やプログラミングのサポートなどはあっという間に完結します。

相場予測の分野においても、画期的な利用方法が生み出され、個人投資家達もプロの投機筋と互角に勝負することができるようになるかもしれません。

偽情報をどう排除するのかが大きな課題

生成AIにはたくさんのメリットが存在する一方で、詐欺メールやフェイクニュースを大量に生成し易いというデメリットがあります。

これには適切な対策が求められるところですが、相場の世界でも偽情報が先行き予測を困難にし、社会的混乱を招くのではないかという点が懸念されているため、政府と市民が協力し、AI利用に関するガイドラインを作成することが急務になりそうです。

また企業側も、AIは学習元のデータによって事実誤認やバイアスを受け継ぐ可能性があるため、透明性の高い対応を心掛け、どのデータセットを学習させるかを慎重に選定する必要があります。

しかし普及が急速に進む中、こうした規制や対策が効果を発揮するかどうかは実際に運用してみなければ分からないというのが現状です。

 

大規模な生成AIは、あらゆる知的作業を遂行できる可能性を秘めており、これを一部の企業が独占すれば、社会に与える影響は計り知れません。

また、一般的に生成AI同士が敵対することはないとされていますが、現時点ではその真偽を確認する術は持ち合わせていません。

従来のAIは、先行きの予測や正誤の判定など、AIモデルが学習した内容を基に自動化することを目的としており、「識別系AI」とも呼ばれるように、データを適切なグループに分類することに長けています。

一方の生成AIはそれだけにとどまらず、データから学習した内容を元に新たなコンテンツを生成できる「生成系AI」という特徴を持っています。

例えば、犬の画像をAIモデルに学習させた場合、従来のAIは「犬」か「犬以外」かを判別しますが、生成AIは「犬」のような画像を新たに生成することができます。

実際に普及してみないことには、為替市場への影響がどれほどのものになるのかは分かりませんが、かつて経験したことのないAI主導の相場にリスクが伴うことは、あらかじめ覚悟しておく必要がありそうです。