6月6日から9日にかけて実施された、欧州連合(EU)加盟27か国の選挙では、極右勢力が多くの議席を獲得し、これまでの欧州議会とは大きく異なる様相を呈し始めています。

EUは、加盟国間の経済・通貨の統合、共通外交・安全保障政策の実施、欧州市民権の導入、司法・内務協力の発展などを目的とし創設された国家連合ですが、四半世紀を経てその役割が大きく変わる可能性が浮上しています。

それぞれの国の状況をまとめてみました。

 

フランス

極右政党「国民連合」が勝利し、マクロン大統領が解散総選挙を電撃発表しました。

他の欧州連合(EU)諸国でも極右政党やナショナリスト政党が議席を増やしていますが、特にフランスの状況は際立っており、解散総選挙で極右政党がさらに票を伸ばせば、マクロ大統領は辞任に追いこまれる可能性が高まります。

辞任の観測報道が出るたびに、フランス国債は大きく売られる状況となっています。

 

ドイツ

ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツは経済およびエネルギーなどの貿易面でロシアとの関係を断ち切っており、かつての平和主義的な国民感情は消失しつつあります。

結果的にドイツの3党連立政権は困難な状況に追い込まれましたが、ショルツ首相はフランスのように解散総選挙を求める意向は示していません。

今回の選挙では、保守政党キリスト教民主同盟(CDU)が30%でトップに立ち、極右政党のドイツのための選択肢(AfD)が得票率15.9%で2位となりました。

ショルツ氏率いるSPDは13.9%で3位に落ち込み、その凋落ぶりが際立つ結果となりました。

 

イタリア

中道左派の野党「民主党(PD)」が期待以上の健闘を見せたものの、メローニ首相率いる極右政党「イタリアの同胞」が選挙で勝利する結果となりました。

今回の選挙はメローニ首相の人気を裏付ける結果となり、国内政治における支配力は確固たるものとなりました。

 

オランダ

緑の左派政党が最多議席を獲得し、自由党(PVV)も大幅に議席を増やしたことから、オランダは政治的に安定した国であることを示す結果となりました。

 

ハンガリー

ヴィクトル首相率いる右翼政党「フィデス」が選挙で勝利しましたが、中道右派の新政党「ティサ」も野党として台頭しました。

この結果は、欧州全体で中道左右両派が過半数を失うことを示しており、極右のナショナリスト政党と親EUのリベラル派の影響力増大を反映しました。

 

オーストリア

オーストリアでは、キックル党首率いる自由党(FPÖ)が勝利し、政治の新時代到来を喜ぶ声が上がっています。

欧州議会選挙での極右の躍進は、EU内の多くの地域で見られましたが、その背景には移民問題やインフレ、景気低迷による生活困窮など、市民の不満の高まりが主な要因となっていると思われます。

また、気候変動対策の強化により市民の負担が増加したことも、環境規制の弱体化を求める極右勢力の台頭に繋がりました。

しかし、EUの極右政党は国ごとに異なる優先事項を持っており、結束が難しいという側面もあるため、EUの政策に実質的な影響を与えるためには団結が不可欠です。

現状ではEU支持派が、議会で半数以上を確保しているため、すぐに大きな変化が起きるとは考えにくい状況ですが、今後右傾化が進めばEUの性格自体が大きく変わる可能性もありそうです。

欧州圏で加速しそうな各国の首相退陣

今後、EU加盟各国では政権交代が加速することが予想されます。

フランスのマクロン大統領は、夏を越す前に退陣する可能性があり、ドイツのショルツ首相も存在感が低下しつつある状況です。

英国はすでにEUから離脱していますが、スナク首相が大統領選で敗北すれば、秋口に開催されるG7には違う顔ぶれが揃うことになります。

岸田政権も存続が危ぶまれている状況ですが、主要国のリーダーが追放され新たな時代が到来する可能性が高まっています。