5月第1週の後半あたりからあらゆる資本市場で売りがでるという全部売り現象が顕在化していますが、週があけてもこの状況には歯止めがかからず、これまで高値を継続してきた株式銘柄もドル円もビットコインなどの仮想通貨の領域にも激しい売りが示現しはじめています。

米株市場は日替わりで上昇と下落と繰り返すというパターンがさらに短くなり、1日の取引の中でもNYダウなどは200ドル上げて下げて、また上げて最後は400ドル近い下落で相場を終えるといった、もはやまともにトレードできない投げ踏み応酬相場を繰り返すようになってきています。

一体何が起きているのでしょうか。
この謎を解く大きな材料がマージンコール、つまり証拠金取引における追証の問題であることが見え始めています。

最大の問題は個人からプロまで含めて証拠金取引における追証問題

Data NYSE

上のチャートはNYSEが開示しているマージンデット、つまりレバレッジを含めて借金で株を買っている人達のボリュームとS&P500の相関を示したものですが、リーマンショック以降市場参加者はレバレッジを利用するなどして最大限の借金をして米株取引をしており、足もとの状況のようにひとたび株価が大幅に下落することになるとマージンコールがかかって追証を求められることになるため、とにかく手持ちのポジションで利が乗っているものを須らく売り飛ばして換金しようとすることになります。

これがマージンコール起因の全資本市場全部売りの正体であり、今まさにそれが激しく進行中です。

米株3指数だけ見ていると確かに下げたといってもそのレベルはまだ危機的な状況には至っていないように見えますが、個別株レベルではここ数年大きく上昇したハイテク株銘柄に凄まじい売りがでており、一部の銘柄の証拠金取引で求められる追証を用意するために利が乗っているものからすべて売りさばく、という投資家行動がピークを迎えています。

上の図はNASDAQのヒートマップですが優良銘柄すべて売り浴びせとなっており、このマージンコール相場が異常なところに差しかかっていることがはっきりと認識できます。

3月から急激な上昇を果たしてきたドル円も未実現益をたっぷり含んだポジションのため、今週に入ってマザーマーケットとしてドル円の流動性が高い東京タイムの仲値に実需とは思えない大玉が登場して、思わぬ形で相場が下落する場面に出くわすことも多くなっています。

もう円安相場もおしまいかと思いがちですが、実は投機筋のこうした証拠金をまかなう懐事情にドル円が関わっている可能性はかなり高いと思われます。

追証が入れられず強制決済の大量示現も相場を下げる悪要因

手持ち金融資産を売却して追証を準備でき、事なきをえた投資家は疲れ切ってしまっていますが、その追証を期日までに用意できずに強制決済で損切を余儀なくされる投資家も激増しているようで、証拠金による取引が全体の7割近くと言われるビットコインの大暴落は完全に強制決済によるものと見られています。

しかもその強制決済は毎日所定の時間に一斉に損切となり、それがさらなる相場の下落に貢献してしまい、一旦は戻ったかに見える相場を激しく下落に導く日々が続いています。

Data みんかぶ

米国で一世を風靡したロビンフッダーもガタガタの状態

コロナ禍で多くの人が働きに出られなくなり自宅待機を余儀なくされた2020年に多額の給付金が配布された米国で、これを投資原資としてスマホアプリで株を売買するのが若者を中心にブームとなり、それにあやかってネット証券の一角として一気にブレイクしたのがロビンフッド証券でした。

同社は2013年の設立となりそれほど新しい企業ではありませんでしたが、この成長で2021年には見事NASDAQに上場を果たすことになります。

しかし今年になって本邦がゴールデンウイークに突入する直前の4月28日、今年第一四半期の収入が前年同期比43%に激減し、アナリストの事前予想をはるかに下回り、調整後純損益は3億9200万ドルの赤字となったことが大いに嫌気され、株価も激下げの状況となっています。

またそれと並行して同社がスタッフ総数の9%にあたる340名のジョブカットを発表していることから、相当危機的状況に陥っているという見方が広がっています。

上場から1年も経たずにこのように落ちてしまったため、利用者が激減していることは間違いなく、ここからの動きが非常に危惧されるところです。

ロビンフッド証券がこうした危機的な状況に追い込まれているため、それを利用してトレードをするいわゆるロビンフッダーたちもすでに大勢が市場から退場しています。

下げればトレーダー同士が徒党を組んで思いきり買い上げるといった取引が一世を風靡したミーム株のAMCやGamestopも、昨年の高値の2掛け3掛けレベルに暴落し見る影もありません。

またそれ以外にも人気が高まったZoomやPinterest、Netflixも7掛け以下にガタガタですでに見る影もなくなっており、足もとでのさらなる下落で強気だったロビンフッダーもかなり追証を要求されて窮地にたたされており、保有株式の投げ売りや強制決済がさらに相場を下げるという悪循環に入ってしまっているようです。

金融市場の状況は我々の想像以上に悪化している可能性

通常相場の大暴落というとなにか明確な理由を求めたくなるものですが、最初はFOMCの結果発表からスタートしても市場参加者のセンチメントがいきなり広範に悪化し、皆が出口に殺到するような動きになるとまさにそれが暴落の引き金になる可能性が高いです。

実は今がその暴落の起点になっているかも知れない、ということは十分に意識しておきましょう。

それぐらい、足もとの相場に接しているとおかしな雰囲気を感じさせられる状況になっています。