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市場は早いもので6月相場入りしていますが、この5月に日銀は1度もETFの購入を行わないまま1か月が経過することとなり、すでにステルステーパリングを開始したという認識が市場を駆け巡ることとなりました。

3月の日銀政策決定会合では日経平均ベースのETFからTOPIXベースのETFの買い入れに変更することが示されましたが、買い入れをまったくしないという選択肢はこれまで示されなかっただけに、日銀の政策に変化が出ていることに相場は驚きを隠せない状況です。

国会に招聘される黒田日銀総裁は引き続き金融緩和を行うことを口にしており政策変更がないことを強調していますが、1か月間株式相場が下落してもまったくETFを買わなかったのは実に2012年12月の安倍前政権が発足して以来のことだけに、この事実だけをもってしても完全に日銀の姿勢が変わったという見方が強まりつつあります。

この8年以上、とにかく株価が一定値幅で下落すれば確実に日銀がでてきてETFの購入で価格を支えてくれるという図式が崩れたのは大きな問題で、本来こうした人工値付け相場を中央銀行が主体的に行うこと自体が大きな問題ですが、このやり方にすっかり慣れて当たり前のことと認識してしまった市場参加者にとっては非常に厳しい状況に追い込まれていることがわかります。

月末安、月初高というアノマリーも崩れる始末

昨年末からの数か月間はどれだけ高値で推移していても日経平均はなぜか月末に崩れ、月初にすぐ盛り返して高値で始まるという不思議なアノマリーを繰り返してきました。

しかし5月末から6月に関しては月末の崩れは今まで通り示現したものの、月初は上昇して終わることができず市場には変化の波が訪れ始めています。

取引きボリュームも少なくなり、外人勢を含めて日本株の相場に興味をもつ向きが減っているようにもみえますが、例年夏に向けては上昇がおぼつかなくなる日経平均がここからどのように推移していくことになるのかが注目される状況です。

相場は自律的に上げたり下げたりの循環を示現するものですが、長らく続いた人工値付け相場の結果、市場参加者がそれをうまく受け止められなくなる危険性もあり、ここからの相場動向には注意が必要になるものと思われます。

新発10年債でも取引き不成立が示現

日銀の市場に対する取り組みの変化は株式のみならず債券の領域にも広がりを見せています。

6月1日における10年物国債は、業者間売買を仲介する日本相互証券で一日を通して取引が不成立という事態が発生しています。

日銀は5月に続き6月も国債買い入れを据え置きにしたことが影響しているものと思われますが、国債買い入れが順調に進まない場合には当然のことながら債券金利上昇に繋がることからこちらも今後の動向が非常に気になるものとなっています。

世界的には中央銀行がテーパリングを示唆したり利上げを考えるといった発言をした国の通貨は遍く買われて上昇することになっており、日銀のステルステーパリングが本格的テーパリングの足がかりであるということが明確になった場合、ドル円もドル高ではなく円高にシフトする可能性も出てくることになり、日銀の動向がさらに相場に大きな影響を与えることも視野に入れた取引が必要になりそうです。

現在世界の主要国ではこれまでの緩和一辺倒から金融政策当局の姿勢が変わり始めおり、まずは米国FRBがどう動くのかに関心が集まっていますが、日銀の動きもここからは相当重要なものになりそうで、それぞれの国の動向をしっかり見極めることが重要な時間帯になりそうです。