7月14日、ニュージーランド準備銀行の政策決定会合の結果発表が発表され、金利は市場の事前予測のとおり据え置きとなりましたが、緩和措置の引き締めに動きはじめ、事前の市場予測どおり大規模資産買い入れを今年の7月23日から一旦停止すると発表したことから対ドル、対円でNZドルは大きく上昇することとなりました。

世界の主要国の中でも住宅価格の上昇がもっとも酷いニュージーランドではこのままの状況を放置しておくわけにはいかず、中央銀行がインフレ対策と不動産価格上昇に歯止めをかけるための動きに出ていることが注目されています。

来年9月には利上げが観測されはじめていますが、状況次第ではさらに利上げ時期が前倒しになる可能性も出始めています。

ニュージーランド準備銀行のこうした動きは中央銀行としてはきわめて伝統的な政策手法の実施であり、市場でもかなり判りやすいやり方となっていますが、米国FRBはこれとはかなり異なる手法を取ろうとしており、各国中銀の政策姿勢の違いが通貨高、通貨安を決定づける大きな材料になってきていることが分かります。

すでにカナダ中銀も利上げをしているので、いわゆるアングロサクソン系の国がこうした動きを揃えてくる可能性もありますが、英国についてはまだ緩和を続けることが示されており、オーストラリアがニュージーランドに追従した動きになるのかどうかが気になるところです。

パウエル議長は議会証言で緩和継続を訴え

一方15日の日本時間午前1時から開催された下院の議会証言に登場したパウエル議長は、労働市場での最大雇用には程遠く、かなり大規模な金融緩和策が依然適切とのハト派発言を継続させ、結果的にドル安が進行することとなりました。

パウエル議長はインフレが一時的であることを再び訴求し、足元ですぐにテーパリングや利上げを行うことが正しくないことを改めて発言しています。

ただ、市場では多くのアナリスト等がインフレが一時的でなくなりつつあることを指摘し始めていることから、このFRBの姿勢がどこまで貫き通すことができるのかにも大きな注目が集まることになりそうです。

これまで中央銀行といえばほぼ同様の伝統的な政策手法を繰り出してきたわけですが、FRBのように全く過去にはなかったような言説を強めていくことになるのはまさに非伝統的な手法であり、組織としての独立性よりもバイデン政権への親和性を重視した瀬策履行となっていることは鮮明な状況です。

7月にもFOMCが開催されますが、政策について変化があるとすれば8月のジャクソンホールを待つことになるのかもしれません。

ここからは中銀の政策内容次第で通貨の強弱が鮮明化する時間帯に突入

これまで各国の通貨はその国の政策金利の違いから強弱が決められてきたわけですが、すでに金利自体はどこも低いことから大きな材料ではなくなりつつあり、むしろ各国中央銀行の政策姿勢の違いこそが通貨の強弱を決定づける重要な要因になりつつあることがわかります。

実際ドル円では米債金利が大幅に上昇してもドル高が延々と続くというパラドックスが現実のものになってきており、債券金利と為替の相関性は崩れつつあります。

すでにどの国も中央銀行がどれだけ市場に資金を投入し緩和を続けるかが経済成長にも大きな影響を及ぼすようになっているだけに、すべては中銀の政策次第の相場になってしまったことが改めて理解できる状況です。

そうは言ってもこうした状況が永続的に展開されることはなく、どこかで破城を迎えることになるわけですから、我々は危ないところにたたずみながら政策実施を注目していることに改めて大きなリスクを感じさせられます。