トルコリラというと、国内ではスワップ狙いでトルコリラ円の通貨ペアを店頭FX業者が上場する様になっているので多くの個人投資家が長くトレードを行うという人気銘柄でしたが、足元では対円でとうとう6円を割り込み、ほとんどナイアガラの滝のようなチャートが示現しています。
これでは多少高いスワップがとれたとしても証拠金として投入した原資が維持できないので、下手をすれば元本に対して国内業者では追証が発生しかねないところに至っており、さすがにトレードの対象として考えることができないところにさしかかっています。

海外FXではドルトルコリラ、ユーロトルコリラが厳重注意銘柄

海外FXの場合、幸か不幸かトルコリラ円を上場しているブローカーはほぼ存在しないので問題となるのはドルトルコリラやユーロトルコリラということになりますが、状況は同様で対ドルでは著しくトルコリラが弱含んでいる状況がチャートから確認できます。

上のチャートは直近の一週間のドルトルコリラですが、すでにロケット台のように吹き上げる動きになっており、とてもではないですがトルコリラを買うことでスワップを確保するなどという悠長なことは言っていられないのが現実です。


また長期の月足で見てもトルコリラはここ10年一貫して弱含んでおり、下落の長期トレンドが延々と形成されているので買い向かうべき通貨ではないことは明白です。

過去10年あまりのチャート形状は一週間のと見分けがつかない位同じ形状をしていいるため、いかにトルコリラが弱い通貨なのかがしっかり確認できます。

エルドアン大統領の再選がトルコリラ売りに火をつけた形

Photo Reuters

トルコリラがここへきて大きく下落を始めているのはエルドアン大統領の再選が影響を与えていることは間違いなく、これに起因して7日の外国為替市場ではトルコリラが1年余りで最大の下落となり最安値を更新しています。
当初エルドアン勝利ですぐにリラ暴落が始まるのではないかと危惧されましたが、実際には一拍おいて下落が加速する格好になっています。
リラは一時約7%安となっているため対円で6円を割りこんだのも当たり前で、今月22日のトルコ中銀の政策決定会合で引き続き利下げを続けるような声明がでれば一段のリラ安も覚悟しておかなくてはならない状況に追い込まれています。
インフレが到来しても金融緩和を続ける日本の日銀もかなり異様な存在ですが、インフレで利下げ断行というのはそれをはるかに上回る異常政策で、トルコ国内ではこれを誰も止められないのが大きな問題になりつつあります。

トルコの歴史はインフレの歴史といっても過言ではなく、90年代には100%超という恐るべき状況を示現したこともあるほどインフレは延々と続いています。
21世紀に入ってからは比較的落ち着いた推移となっていましたが、エルドアンが大統領になってからというもの中央銀行にまともなインフレ対策の政策を打たせないことが延々と続いたことから結果として凄まじいインフレに見舞われる用になっており、足元でも70%を超えるインフレが続いています。
金利が下がれば物価も下落するという謎理論がエルドアンの持論のため政策金利の引上げは全く行えておらず、逆に引き下げることがインフレに拍車をかけているのは間違いなく、対ドルではたった1年でほぼリラの価値が半減するという恐るべきところに陥っていることがわかります。

トルコリラはレバレッジをかけて取引するFXの商品としては完全に終焉

海外FX業者ではハイレバレッジが売りものになっているのはご案内のとおりですが、その業者でもトルコリラの通貨ペアではレバレッジを大きく制限するところが増えているのが現状です。
トルコリラをもっとも買い向かうのは本邦の個人投資家が中心で、トルコリラ円の場合だと市場参加者のほとんどがロングを保有していることから、下落がはじまると損切を含めて一斉に投げがでてそれがさらに相場を引き下げるという悪循環を繰返しているようです。
海外FXであればほとんどの業者にゼロカットシステムが導入されているため、不測の事態になっても追証を求められるリスクはありませんが、国内業者の場合にはスプレッドが広がって強制ロスカットを飛び越えて証拠金を超える損失がでるといったことは十分にありえるので、すでにレバレッジをかけて証拠金取引をするべき対象商品ではなくなっていることがわかります。

本来は国内業者がもっと投資家に注意喚起を行うべき状況なのですが、延々とロングを保有して資金不足になる本邦個人投資家もそれなりに出始めているようで、もはや取引すべき銘柄ではなくなったことを強く感じさせられる状況です。
国内では賢明なトレーダーはメキシコペソの取引にシフトしているようですが、最後までトルコリラにこだわった向きはここへ来て大変な損失を出し始めているようで、非常に危惧される時間が続きます。
世界的にみても自国民ですら買わないトルコリラをスワップがあるからという理由で買い向かっているのは日本の個人投資家だけのようで、トルコという国のファンダメンタルズをより正確に理解する必要があることを改めて感じさせられる次第です。