米国バイデン大統領は9月9日ホワイトハウスで全ての連邦政府職員と契約職員・請負業者、医療関係者に新型コロナウイルスワクチン接種を義務付けると発表し、さらに一定規模以上の民間企業にワクチン接種または検査を義務化する新たな規則を発令することを発表し物議を醸しています。

米国では依然として8000万人、成人の約3割以上がワクチン接種に抵抗していますが、バイデン大統領は足もとで起きている新型コロナ感染拡大はワクチン未接種者が引き起こしているパンデミックであると断定しており、ワクチン接種は自由や個人の選択の問題てはないと未接種者を強烈に批判しています。

このルールに従わない場合、連邦職員は解雇、民間企業の経営者は制裁金の処分が科される可能性も示唆しています。

当局者によると、ルールを順守しない企業経営者には違反1件につき約1万4000ドルの制裁金が科される可能性があると言います。

Photo Bloomberg

しかしワクチン接種には多くの問題があり、バイデン政権の姿勢がこのまま実行されるのかどうかはまだ分かりません。

ワクチンならばなんでもいいという問題にさらに変位株に効かない問題も顕在化

今年初頭から積極的に国民のワクチン接種を進めてきた結果、5月ごろまではコロナ感染が落ち着いたかのように見えたのが米国でしたが、デルタ株といった変異株が感染拡大してからはワクチン接種しても抑え込めない状況に陥っています。

コロナ対策に時間とカネがかかりすぎるのはどこの国も同じですが、未接種者がいるから感染が収束しないと断定するバイデンのやり方は良いものとは言えません。

しかも米国ではファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどのワクチンが接種されていますが、どのワクチンの効果効能もほぼ同一視している点も大きな問題になってきています。

すでに2回接種してもデルタ株に感染するといったケースも続出しており、ワクチンが変異株のまん延にワークするのかという問題はかなり深刻です。

Data WHO

ワクチン自体の副反応の激増も大きな問題に

足もとでは既存のワクチンがデルタ株以降の変異株に効力を発揮するのかどうかという問題とは別に、ワクチンを接種したことで重篤な後遺症の発症や、死に至る状況に陥ったといった重大な副反応の問題も広がりつつあります。

どのワクチンも長期間に渡って治験を繰り返した結果の商品ではないので、接種することでかなりの副反応や命に関わる事態に陥る人も増加しており、バイデン政権が強硬策に打って出た場合こうした問題の責任を後になって問われる可能性は相当高く、この部分だけでかなりのリスクが発生するかもしれません。

連邦政府や企業の職員の解雇問題などに発展する可能性大

経済、社会の視点で見ると国や民間企業を相手取った訴訟問題が爆発的に増加するリスクもあります。

この国ではマスクの着用すら義務化できない、独特の人権擁護の発想からの反対運動が脈々と続いていて、さらに雇用を絡めた形で接種の義務化が強制されればそれだけでも数えきれない訴訟が起こされる可能性があります。

バイデン政権はそうした状況も一切ひるまずに進めていくつもりのようですが、民間企業の場合はそうした訴訟に時間とカネをかけることに強い危機感をもっており、そう簡単に義務化ができないのではないかという見方も強まりつつあります。

さらに義務化なら解雇より先に企業や政府職員を辞任する動きも多くなる可能性があり、結果優秀な人材が大量に辞任するといった極めて特殊な状況になる危険性も出てくるかもしれません。

国も州政府も民間企業も早期に新型コロナ感染拡大が収束に向かうことは共通する願いであることは間違いありませんが、やり方を間違えば米国内社会での深刻な分断を引き起こしかねず、2022年の中間選挙にさえ大きな影響を及ぼしかねません。

トランプを打ち負かした当初は長く政権構想として様々な政策、法案を検討作成してきたこともあってそのクオリティは非常に高く、国民の支持も得られたバイデン政権でしたが、アフガニスタンの撤退あたりからかなり政策が雑なものになりつつあり、特に国民全員の命に関わる新型コロナの問題では紋切型の政策を国民、企業に押し付けようとしている点が気になります。

一見すると金融市場にはなんの関係もなさそうな話ですが、実は政府の活動、企業活動、個人の行動を含めて相当関係が深いので、どのような収まりどころを見つけるのか引き続き注意を払った方がいいでしょう。