岸田氏総裁候補特設サイトより

9月29日自民党の総裁選で岸田文雄氏が新総裁に選出されましたが、日本の株式市場は反応があまり無く、市場に多くいる外人投資家勢がほとんど興味を持っていないのがその大きな理由になっています。

すべてが岸田新総裁の影響ではありませんが、同氏の選出後日経平均は3日続落、菅首相が退陣する意向を表明した9月3日以降の上げ幅がほぼ吹き飛んだ状態となりました。

1日は米株が大幅上昇したことを受けて日経平均先物も2万9000円を回復し週明けはある程度値を戻すことが期待されますが、事前に日本の証券業界のアナリストが予想していたように新たな政権と財政出動による政策への市場の期待から相場上昇というような状況は全く示現しなかったことが改めてわかります。

Who is Kisida?に象徴される知名度のなさでアルゴリズムも動かない

29日に岸田新総裁が選出された際には海外のファンド勢からWho is Kishida?のワードが飛び交ったと言いますが、国内的にはある程度の知名度を誇っていても海外では知られていないのがこの方の特徴で、アルゴリズムも起動しない非常に残念な状態となってしましました。

第二次安倍政権がスタートした時点では、安倍氏は一度総理大臣を経験しているということで世界的に知名度があったこと、さらに国策で株価を押し上げ円安を強力に推進するという政策に海外ファンド勢が飛び乗る形で政権発足当初から相場が大きく上昇を始めたのは記憶に新しいところですが、岸田政権はこれから総選挙を戦うことになり順番は安倍元首相の時とは逆になるので、ここから総選挙期待の相場になることも考えられる一方、このまま知名度も政策も理解されずに株価は横這いを続ける可能性も出てきました。

やはり日本の政局は国内に住む投資家が感じているほど大きな問題ではなく、ステレオタイプに総裁選や総選挙で株価が上がると考えるのはやめておいた方がいいでしょう。

海外投資家は回転ドアの再来とみている可能性大

第一次安倍政権があっけなく終わった後、日本の政権は2012年まで自民党でも民主党時代でもほぼ1年に1回交代するという非常に目まぐるしい変化があり、米系のメディアではこうした状況を回転ドアなどと言って揶揄していました。

確かに菅首相もたった1年で政権を放り出さざるを得なくなり、安倍元首相の影響が非常に強く感じられる岸田新政権も総選挙で失敗すれば1か月強の政権で終わる可能性もあるので、海外投資家の興味がほとんど集まらないのは仕方がありません。

財政出動に関しても昨年度は通常の国家予算のほぼ2倍に当たる180兆円もの国家予算を投入したものの成長は全く図られておらず、主要国と比較してもコロナ禍で落ち込んだ経済の回復がほとんど実現していないので、成長率ベースでは最下位の状態にある点も危惧されています。

選出されたご本人は意気揚々ですが、国際的な金融市場から見れば中国の問題や米国の債務上限問題の方が遥かに関心度が高く、極東の衰退国における政治状況に世界がほとんど関心を持っていないことがあからさまになってきているのは非常に残念な状況といえます。

10月後半から12月にかけては株式市場は日本でも上昇しやすく、またドル円もこの時期には上昇しやすいだけに国内では総選挙の結果が大きく影響しそうですが、野党の支持率も急激に高まっているわけではないので、このまま岸田政権が継続となった場合には年末に向けて大きな相場の進展が起こらずに新しい年を迎えるという寂しい展開も覚悟しておく必要があります。

米国では2022年の中間選挙を睨みバイデン政権はバラまけるだけカネをバラまくという戦略に打って出ていますが、政権に対する評判は日に日に悪化しており支持率を大きく下げる結果となっています。

ドイツでも政権交代になりますが、世界的に主要国がはっきりしたアイコンで明確な政策を打ち出せないファジーなリーダーそろい踏みとなる点にもかなり注意が必要になってきています。

中でも岸田新首相は存在感のない人物としてスルーされてしまいそうなところが非常に心配です。