米労働省が8日発表した9月の雇用統計の速報値は、非農業部門の就業者数が前月比19.4万人と市場の事前予測50万人を大幅に下回り、8月は36.6万人を下回る結果となりました。
一方失業率は失業率は4.8%と前月よりは改善する結果となっています。
これを受けてドル円は一旦下落しましたが、米10年債金利が1.6%を突破するといった上昇で息を吹き返し112円台を上伸する動きを見せています。
現状では10年債利回りは今年3月から5月につけた高利回り水準よりまだ低い状況ですが、上昇のスピードがかなり速かったことからドル円は3月よりも急ピッチで上昇をはじめており、このままで行けば113円を突破する可能性も出始めています。
こうなると為替の世界では11月のFOMCにおけるテーパリングを市場が織り込む形となりますが、果たして本当に11月のFOMCでこれを決定できるのかどうかに注目が集まります。
パウエル議長は議会で凄まじく叩かれ続投は相当危うい状況に
米国市場では10月中にもバイデンがパウエルFRB議長の再任を発表するのではという憶測から、株価が戻しているという話が飛び交ってきましたが、実は今週に入ってから民主党左派の筆頭あるエリザベスウォーレン上院議員が猛烈なFRB批判とパウエル議長の責任追及を再開しており、支持率を大きく落としているバイデン政権としてはこのままパウエルを再任するのは極めて難しい状況になっています。
パウエル再任はウォール街が勝手に織り込んでいる話ですが、ウォーレン議員の議会での追及発言を聞いていると、パウエル再任は可能性がないかと思われます。
10月4日の月曜日ウォーレン上院議員はSECに書簡を送り既に辞任が決まったカプラン、ローゼングレンに加え、トランプが送り込んだ副議長のクラリダという3名のFRB当局者による取引がインサイダー取引法に違反しているかどうかを調査し、当局者による「倫理的に疑わしい取引」の合法性について意見を求める内容を依頼しています。
ここで注目されるのは新たにクラリダ副議長の名前が挙げられていることです。
クラリダは会見に出てきても予め用意したペーパーを棒読みする人物で、米国の金融メディアでは影の薄い存在として広まっていますが、個人の投資生活では全く別の動きをしていたことが明らかになっています。
確かにクラリダはカプランやローゼングレンとは異なり個別の証券銘柄を取引はしていなかったようですが、パウエル議長がパンデミック懸念による潜在的な利下げを示す声明を発表する前日に自分が保有する投資信託から相当な額をほかの二つの株式ファンドに移行させたことを指摘しており、市場や経済に大きな影響を与える決定に先だってそれにアクセスし、自らの投資活動に利用することには倫理的な正当性を主張できる根拠はないと厳しく批難しています。
これを受けてウォーレンは議会でパウエル議長を改めて批判しています。
パウエルは金融市場を効果的に規制することに失敗した上にFRB幹部による倫理的問題を議長として認識することもできておらず2つの失敗をおかしているという厳しい内容がウォーレンの指摘です。
このウォーレン上院議員は単にヒステリックな左派系の議員とは大きく異なっていて、前職はハーバード大学のロースクールの教授なのでその指摘は非常に理にかなっており、しかも事実を指摘して批判を積み上げることによりパウエルに逃げ場を与えないように追い詰めています。
このやり取りを見る限りパウエル議長が簡単に2022年2月以降も再任の可能性がない状況が続いており、仮にブレーナード理事が任命されることになれば11月のFOMCでのテーパリング実施の決定は延期される可能性も出てくることから、ここからは経済指標よりFRB突風人事のほうが大きな影響を与えることになりそうです。