カーボンニュートラルが世界的に叫ばれるようになってから、細密な実行計画をたてて実施しないことにより強烈なインフレが示現するのではないかといった危惧の念が市場につきまとっていましたが、どうやらこの冬それが超現実のものとして示現する可能性が高まりつつあります。

確かに環境面から考えれば地球に住む我々人類は誰ひとりとして否定することができない壮大なテーマが脱炭素社会であることは間違いありませんが、実現可能な実行計画もないままに掛け声だけで脱炭素に舵を切ることは人類にとっての自殺行為になりかねず、冬にむけて世界の各国でかなり大きな問題が生じようとしています。

米国が口火を切り首相国はそれに追随せざるを得ない状況に

米国でバイデン政権が誕生してからはグリーンニューディール計画を立ち上げ強力にカーボンニュートラルの政策を推し進めようとしています。

世界の主要国はそれについていくしかない状況になっていますが、安易な目標設定を掲げることで現実の状況との間に差ができ始めているのが実情です。

就任から1年で辞任を余儀なくされた菅前首相も2030年の温室効果ガス目標 2013年度比46%削減などという数値目標を掲げましたが、ご本人はすでに政権を終わらせておりこれが実現できるのかどうかは全くわかりません。

中国は2022年の北京冬季五輪に向けて西側主要国にも遜色のないカーボンニュートラル化を推し進めているようでしたが、足もとでは強烈な電力不足に陥っており脱炭素どころの騒ぎではなくなりつつあります。

秋口から電力不足が深刻化しており、石炭による火力発電もCO2排出などお構いなしに最大限利用しないと国民が冬を乗り越えることもできません。

直近では中国北部の石炭採掘も大雨で崩壊し、北朝鮮から密貿易で石炭を確保し始めているといった話まで出始めています。

自動車のEV化もいち早く進行している中国ですが、結局電力の発電ができないのではカーボンニュートラルも実現できなくなってしまいます。

欧州では、気候変動対策に端を発する物価上昇、いわゆるグリーンフレーションの危機はかなり高まっています。

とくにガソリン価格の上昇や天然ガス価格の暴騰は確実にコストプッシュインフレによるスタグフレーションの到来という深刻な状況で、原発を持続可能エネルギーではないと規定しているドイツでは様々な電力創出に取り組んでいますが、もしロシアから天然ガスの供給が絶たれることになればこの冬が乗り越えられないという危機的状況に直面しており、EU全体でもカーボンニュートラルなど口にしていられないのが実情です。

EU域内ではこの冬にむけて計画停電を実施するといった話も飛び出しつつあり、カーボンニュートラルの実行と現実の問題は酷くかけ離れていることがわかります。

さらにEUから離脱したイギリスはもっと深刻で、脱炭素化へのマイルストーンもないまま無理やり石炭・石油への依存を減らそうとする英国政府の方針がそのまま仇になって天然ガス価格が高騰、発電コストも上昇し、ロンドンでは車のガソリンも供給がうまくいかないといった事態に追い込まれています。

カーボンニュートラルは極めて難しい思想で、実現可能なトランスフォーメーションプロセスに関する精密な実行プランがないと、下手をすれば逆戻り以下の状況になりかねません。

すでに国内でもガソリンの店頭価格はレギュラーでも160円台を超えており、これに円安が絡むことになれば200円に接近することもありえない話ではなく、灯油価格も急激に上昇し始めており燃料主導のスタグフレーションが起きることは充分に考えられる状況です。

国内経済を見ていますとまだデフレから抜け切れていないように見えますが、この燃料関連での価格上昇は間違いなく日本にも大きな影響を与えることが危惧されています。

原油とLNG価格の高騰だけでもインフレは間違いなく到来する

現状では原油価格と天然ガス価格は急激に上昇しており、これだけでもコストプッシュインフレが示現することになるのは避けられません。

世界の主要国でインフレが加速した場合利上げを行う中央銀行も増える可能性があり、政策のコントラストからドルや円が売られる危険性も高まるところです。

ここからはこうした資源価格の推移にも目を光らせる必要性が出てきています。