先週の米英欧の中央銀行政策決定会合を通過し、2月第二週は10日に国会で発表されるという日銀の次期正副総裁人事の内定情報に市場の注目が集まりそうです。
毎回この日銀人事が発表になる時期にはメディアで事前情報が出ますが、今回に関してはかなりそうした報道が少なく実際にはまだ決定していないのではないかといった憶測が飛びがっています。

現状では以下のような候補者の名前があがっています。

雨宮正佳・日銀副総裁
中曽宏・前日銀副総裁
山口広秀・元日銀副総裁
浅川雅嗣・ADB総裁
岡本薫明・元財務次官
木下康司・元財務次官
伊藤隆敏・コロンビア大学教授
氷見野良三・前金融庁長官
内田真一・日銀理事
清水季子・日銀理事
翁百合・日本総研理事長
白井さゆり・元日銀審議委員

こうした候補者は総裁のみならず副総裁の候補も含まれていることから、実際にはさらに絞られるとされています。
大きな選択肢として現状政策を継続するのか修正するのかによって適正人材はかなり異なることが予想されます。


タカ派かハト派かというプロットで言うと上のような仕分けをするメディアも出てきており、現実的には誰が指名されるかということもさることながら、これまでの黒田総裁の緩和路線をそのまま継承するのかあるいはYCCコントロールを含めて巻き戻しを行う人物が指名されるのかということが最大の注目ポイントとなりそうで、市場もそれを意識してドル円の大幅な売り浴びせがでるリスクが高まりを見せています。

岸田総理が阿倍路線を継承するのか変更するのかが最大の注目点

日銀の正副総裁人事の決定は国会での承認を必要とするものの基本的には総理大臣が任命するものなので、すべては岸田氏の意向にかかっているといえる状況です。
したがって岸田総理が政策継続を希望する場合には上記のプロットのハト派領域の人物から選択を行うことになるでしょうし、あえて方向を変換させたいと考えるのであればタカ派のグループのなかから人選してくることが考えられます。
ですので市場はまずその部分に大きな関心をもつことになるものと思われます。

政策変更意向のつよい人物の起用が内示された場合にはそこからいきなりドル円が大きく売られることも考えられそうで、10日の国会での内示のタイミングはかなり注意が必要になってきそうな状況です。

現実にいきなり新総裁で政策変更ができるのかといった問題も浮上

ただ現実的な日銀の政策変更を考えると、足もとでも延々と行っている国債買付によるイールドカーブコントロールを新総裁のもとですぐに変更あるいは終了すると言い出した場合には市場に相当なインパクトが与えられることになる点が危惧されるところです。
民間の金融機関のアナリストの予測ではYCC終了と言い出した途端にFF金利は1%程度まで上昇し、日銀の保有国債にも凄まじい含み損が示現することが容易に予想されます。

現状の金利水準でも日銀は年度末段階で8兆円を超える含み損を抱えることになることをすでに発表していますが、満期保有ならバランスシートには登場しないこうした含み損が資本金を大幅に超え始めた場合に、その新任性を評価するのは日銀自体ではなく市場ということになるので、日銀が世界的に市場からの新任性を欠く状況に陥る可能性は十分に考えられ、さらに日本の格付けが下がるリスクも考えなくてはなりません。
こうなるといくら新任の総裁が誕生してもすぐに政策を変更するわけにはいかず当面は継続せざるをえないことも想定され、市場の期待どおりの日銀の政策変更は簡単に示現せずに時間が経過することもありえそうです。

市場はYCC終焉に向けて猛烈な日本国債売り浴びせを仕掛けてくる可能性も

足もとでは米債金利の低下と日銀による共担オペの効果で日本国債の売り浴びせは一旦停止中ですが、ひとたび新総裁がYCCについての見直しを少しでも示唆した途端にまた猛烈な売り浴びせがでる危険性は相当高く、もともと出口戦略が周到に容易されていない中にあってはよほど覚悟を決めないかぎり政策変更を新総裁が安易に口にすることはできないのではないかといった観測も高まりを見せています。
これがあるからこそ後任の引き受け手がないと言われていますが、やり方を間違えれば誰が指名されても市場起因でとんでもない状況が示現するリスクを考えておく必要がありそうです。
現状でも機関投資家や本邦の金融機関などは保有国債に大きな含み損が出ており、時価総額で決算を余儀なくされる業界ではさらに金利が上昇し国債価格が額面から大きく割り込む事態に発展した場合保有の妙味がなくなるだけに、日銀も相当気を使う必要が出てきていると言えます。

新総裁がだれに内定しても市場が過剰に反応し始めるとドル円を筆頭に円の動きがこれまでにないようなものに豹変することには相当な注意が必要になります。
YCCの上限を0.5%に引き上げた昨年12月の日銀政策決定会合後のドル円はなんなく7円ほど円高に動いており、下手をすれば今回はそれを超える動きに直面することもありそうで、10日にむけては十分なリスク管理を考えることが肝要な時間帯になるでしょう。