週末金曜日の日本時間の早朝3時半に突然米国が警戒発言をしはじめたロシアのウクライナ侵攻はすでにこのコラムでもお伝えしていますが、週明けの相場はその後の動きがなにもはっきりしていないことから大きな窓開けにもならず、東京タイムが始まるまではほとんど動きが無い状態で推移しはじめています。

今週の相場はこのウクライナ情勢とFRBの利上げに関する進捗の綱引きが相場の上下動を作り出す材料として機能することになりそうで、すべては新しい動向次第の状況になりつつあります。

米国は危機を煽るが本当にどこまでの戦争になるかは判らない

すでにウクライナ情報は米国からしか出なくなっていますが、バイデンは自らの支持率の低さを改善するためにウクライナ問題に積極的に関与し仲裁人として評価を高めようとしているようで妙に戦争の開始を煽るような情報を出し続けています。

ところが当のウクライナはこうした米国の戦争開始が迫っているという報道に逆に不快感を示しており、微妙なロシアとウクライナの関係をあらためて示現する結果となっていることがわかります。

昨年9月、ロシアはロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプラインノルドストリーム2が完成したことを発表しています。

これが適正運用されればノルドストリームの輸送能力はほぼ2倍のレベルになり、これまでのウクライナやポーランド経由のパイプラインは事実上不要となる状況となっています。

これまで年間20億ドル以上のタリフ収入を得ていたウクライナにとっては国家財政に大きな影響を与える危機となるのは間違いなく、ロシア産ガスのドイツへの直接輸入問題を安全保障問題だと規定して米国を巻き込みながら問題を複雑化させようとしています。

ドイツはウクライナの安全保障に対する指摘を一応認めていますが、その一方でウクライナとロシアの間の仲が欧州のエネルギー安全保障の脆弱性を高めているとも認識しており、無制限でウクライナをかばう立場にはないことも問題を複雑化しています。

この微妙な状況下でのロシアの侵攻リスクの高まりなので、本当に米国が警告するようにロシアが動くのかどうかはまだ判らず、新たな報道が出始めるとまた相場下落が始まるのかもしれませんが、続報がでない限り買戻しがでるリスクも考えておく必要がありそうです。

2014年3月のロシアのクリミア併合が起きた時には月初103.300円レベルだったドル円は2円ほど円高に触れましたが、年度末ということもあり月末には完全に値を戻して4月には104円台を回復しています。

したがってNATO軍や米軍さえも引き込んだ欧州の地域戦争へと発展しない限り、為替への影響はそれほど大きなものにならないことも十分に考えておきましょう。

先週末ドル円はほぼ80銭近く下落しましたが、さらに1円程度は下値余地があり果たしてどこで止まるのか、何らかのサポートラインが下値を維持することに機能するのかについても注目していきたいところです。

FRBが拙速に利上げするという憶測も市場の大きなミスになる可能性

2月10日に異常に注目を集めた米国1月のCPIはご存じのように7.5%と1982年の1月以来40年ぶりの高さとなり、さらにそれに呼応するようにセントルイス連銀のブラード総裁が早期の利上げ加速を煽り、クリントン政権時の財務長官であったサマーズまで即刻QE中止などを求めてきたことから月曜日臨時会合で0.5%の緊急利上げが実施されるのではないかといった前のめりな憶測が飛び交うことになりました。

そこにウクライナの報道がでたことから一気に吹き飛ぶ状況となっています。

このCPIの件はすでにFRBも事前段階から知っていたはずで、今さら慌てて0.5%利上げしてみたところでほとんど意味のない話になってしまっています。

またタカ派のやりすぎブラードは14日にCNBCに再登場して火消しに走らせるようで、誰かに行き過ぎた発言を修正するように政権から指示されている可能性もではじめています。

これ以上株価が急落するような政策を矢継ぎ早に行うことは考えにくく、ビハインドザカーブと市場から罵られてもゆっくり着実に利上げを行うのではないかと想定しています。

とにかく毎回のFOMCで利上げを行っても年間2%程度にしかならないのにインフレ対策になるのか、ここから株式相場が大暴落などに陥った場合に本当に利上げを継続できるのかなど大きな疑問もあり、ましてFRBの資産縮小など全く簡単には進められないのではないかとさえ思う状況です。

このようにウクライナ情勢もFRBの利上げに絡む情報もかなり複雑化しており、ウクライナの問題が明確になればリスクオフになると思われるのでドル円、クロス円、ユーロドルは売られやすくなりますが、逆にFRBの利上げに対する関心がさらに強まればドルが買われるという真逆の展開になることもあらかじめ想定しておくことが肝要な一週間になりそうです。