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日本は建国記念日で祝日となった2月11日、翌日までの米国CPI数字の悪化で大きく下落した米株三指数はNYタイムの開始から上げたり下げたりを繰り返し、いささか方向感のない動きをすることとなりました。

週末だからこんなものかという印象を受けた次第ですが、事態が一変したのは早朝3時半ぐらいで米国政府がロシアのウクライナ侵攻が来週にあるかも知れないと言い出したことからドル、円、スイスフランが瞬間的に大きく買われる状況となりました。

11日午後にホワイトハウスで突然会見したのは米国のサリバン大統領補佐官で、ロシア軍によるウクライナ侵攻について北京冬季五輪の期間中にも始まる可能性があると強い危機感を示すこととなりました。

「脅威は差し迫っている」としてウクライナ滞在中の米国人に48時間以内の国外退避を求めたことから、週明け即戦争開始といった印象を強く受けた金融市場は株も為替も大きく反応する結果となっています。

ここのところリスクオフではドル高、円高が進んだ場合ドル円はあまり動かないことが多かったですが、今回はドル円、クロス円が完全に円高に明確にシフトし、スイスフランもユーロやポンドに対してはフラン高を示現することとなりました。

ただドルスイスフランはそれほど明確ではなくやはり欧州通貨、オセアニア通貨に対して明確な兆候がでていることが確認されました。

Chart data みんかぶ

この手の報道はロシアが実際に事を起こさない限りは続報がでてこないことから米株は下げたままの状態となりましたが、為替はドル円を中心に一定の戻りを試す展開となり、週明けは再度窓開けからスタートすることが予想されるものの実際に侵攻が起こらない限りはここからさらに円高が進むかどうかはまだ判らないというのが現状です。

ロシアは早速外務省報道官が反発

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ロシア外務省のザハロワ報道官は即日声明を発表し、上述の米国サリバン大統領補佐官・国家安全保障担当が北京五輪期間中にもロシア軍によるウクライナ侵攻の可能性があると述べたことに対し、米国はどうしても戦争を必要としていると反発してみせています。

歩兵部隊をウクライナ近隣に終結させているのは事実なので一触即発の雰囲気が漂っているのは間違いなさそうですが、北京五輪の開会式で突っ込んで中露首脳会談を開催したロシアプーチン大統領と中国習金平主席が五輪開催期間中にウクライナ侵攻を実施することを握ったとは思えません。

報道官は「ホワイトハウスのヒステリーが、これまでにないほど顕著になっている」と指摘し「挑発や偽情報、威嚇は、問題を解決するためのいつもの手口だ」と批判しているのがかなり目立っています。

実際にロシアがウクライナ侵攻を開始するとしても北京五輪が終了する2月20日以降ではないかといった見方もあるので、週明けに本当に事態が進展するのかは注意深く見守る必要がでてきています。

実際ロシアが侵攻すれば2日でウクライナの首都陥落か

米国の軍事機関の推測によれば、ロシアがウクライナ侵攻した場合にはまず空挺部隊が席捲し、陸上から歩兵部隊が突入することでほぼ2日以内に首都が制圧される見込みであるとされています。

我々はNATO軍、米軍を巻き込んだ欧州大戦争の勃発をイメージしがちですが、ウクライナ自体はNATOに加盟していませんから銃器などの西側からの提供はあったとしても基本的にはウクライナとロシアの戦争ということになります。

しかもかなり短時間で陥落するとなった場合には東西の押し合いへし合いは西からのロシアへの経済制裁とそれに対する報復措置合戦に縮小する可能性が高く、金融市場にもっとも大きな影響がでることをあらかじめ覚悟しておく必要がありそうです。

中国はすでに北京五輪開催の時期にロシアと連携して共同声明を発表しています。

中露両国は政治や軍事による同盟が他国の安全を犠牲にして一方的な軍事的優位性を追求することは、国際的な安全保障秩序と世界の戦略的安定を著しく損なうと考えるとした上でNATOのさらなる拡大に反対すると明記しており、NATOをこれ以上拡大しないことなどを法的に保証するよう、ロシアがアメリカなどに求めていることについて中国側は共感し、支持するとしていて、プーチン大統領はウクライナ情勢をめぐり、ロシアの安全保障上の懸念について習主席から直接支持を取りつけていることは明確な状況となっています。

したがって西側からの制裁などがでた場合中国がロシアと連携して報復措置を繰り出してくることも考えられ、物理的な戦争行為よりも国際金融市場での戦いが激化する可能性を指摘する声も出始めています。

2014年のロシアによるクリミア併合ではドル円は2円近く下落

ロシアによるウクライナ侵攻で思い浮かぶのは2014年のクリミアの強引な併合問題ですが、同年3月18日には当時のウクライナ政府の意向を全く無視してロシア、クリミア自治共和国、セヴァスポリ特別市のロシア編入に関する条約が調印され、2つの地域は一方的にロシアに併合されるという出来事が起きています。

さすがに今回のウクライナ侵攻の背景とは大きく異なりますが、それでもこの3月18日を巡ってドル円は月初の高値103.30円レベルから2円近く下落する動きを強いられています。

ただ月末は年度末ということもあり月末には103円台に回復しており、一方的な円高にはなっていないことも理解しておきましょう。

週明けはロシアの侵攻を煽る報道がでればさらにドル円は円高方向に下落することが予想されますが、事態が急展開しない場合には意外に簡単に値を戻すことも考えておく必要がありそうです。

ここからは米国FRBの利上げとウクライナ危機に綱引きで相場が上下することを覚悟しておかなくてはならず、為替取引にとってはかなりやりずらい時間が続きそうです。