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スイス国立銀行(中央銀行)は3月7日、外為市場では一時1ユーロ=1スイスフランを超えてスイスフラン高が進行したことを受けて、為替介入を実施する用意があると正式に表明しています。

同中銀は声明で、スイスフランは現在避難通貨としてドル、円とともに買われており、引き続き高く評価されているとしながらも銀は引き続き必要に応じて外国為替市場に介入する用意があるとの内容を発表しました。

スイスフランが一方的に高くならないように防御の為替介入をするというのがこの中銀の意向ですが、長く為替のトレードをしている個人投資家にとって蘇るのが2015年1月にこの中銀が引き起こした対ユーロ無制限介入からの突然な解除声明による相場の大暴落事件です。

もともと2014年からスイス中銀は対ユーロで1.2を防衛線として永続的に為替介入をしてこのレベルを徹底的に守り抜くと宣言し、たしかにこの水準が近づくと相当な為替介入を行っていました。

これを真にうけた個人投資家も良くなかったのですが、多くが1.2のぎりぎり手前あたりでロングを常に仕込んでおり、まさかの時にはそのすぐ下にストップロスを置いて四六時中買い向かい利益を得ることに成功していました。

しかし2015年1月15日のロンドンタイムが始まった日本時間の夕刻、介入原資がなくなったのでとりあえず介入措置を解除すると突然発表したことから相場は大混乱に見舞われることとなりました。

店頭FX業者のユーロスイスフランは大暴落で値飛びという特殊な事態を示現

スイスフランの暴騰が起きた時に、国内の店頭FX業者でのユーロスイスフランの通貨ペア取引に値飛びという現象が発生し、個人投資家が多額の追証を求められることとなりました。

通常通貨ペアの売買価格というのは売りと買いのスプレッドが大きく離れるという、いわゆるワイドスプレッドの状態が経済指標の発表や突然の市場の変化などで現れることは誰もが経験するものです。

当時のスイスフランの暴騰、ユーロの暴落ではFX業者が提示する価格が瞬間的に大きく跳んでしまい、あらかじめ設定しておいた逆指値や業者が安全対策で設定していた強制ロスカットのポイントさえも全て素通りして、暴落後はじめて提示された価格が大幅に下回るところに値がついてロスカットとなったケースが続出してしまうという悲劇的な事態に陥りました。

上の図が当時の状況を正確に表すものですが、通常平時であれば通貨ペアの価格は急激に下落をしても図の左の青い矢印のように常にその数字が表示されて下げていることになります。

したがって損切りのための逆指値や業者が設定している強制ロスカットのラインは普通ならば必ず通過することになり、少なくともこのどちらかが機能すれば、国内のFX相対取引でも証拠金を超える損失がでるということは誰も想定していませんでした。

ところがこのスイス中銀起因の暴落ショックでは、業者が提示した価格はこの図の右の赤いラインのようになりました。

まず、ユーロスイスフラン買いのための指値は通常通りつくことになり、その直後の比較的指値に近い価格に置いた逆指値(たとえば30PIPS程度下)については一応機能しましたが、それをさらに超えたところにおいた指値あたりからは値飛びの発生で完全になにも表示されないまま飛び越えてしまいます。

さらに業者自身が設定している強制ロスカットで本来損切りすべきポイントも素通りすることとなりました。

結果としてこの図のように1.01が暴落後はじめてこの取引で提示された売買価格であるためこのポイントが損切りラインとなってしまい、多くの個人投資家が証拠金不足に陥り追証を求められる結果となってしまったのです。

おそらく逆指値で万が一の暴騰の場合にスイスフランを買おうとして逆指値をおいていたトレーダーの場合も、1.2に近いところはついても少し離れたところにおいたものはつかなかった問題も起きているはずです。

しかしこの場合は完全に逆指値を突き抜けていますから、業者は逆になんとしても支払をせざるを得なくなるという状況に陥りました。

こうした状況はユーロドルやドル円の暴落にも広がり、主要な通貨ペアでは法外な損失となり過去10年のFX取引ではもっとも個人投資家に損失をもたらしたネガティブイベントとなりました。

ゼロカットシステム実装の海外FXの利用者は追証を逃れ九死に一生を得ることに

当時国内FX業者で多額のトレードを行っていた個人投資家は非常の大きな追証を求められることになり、未収金対象者は日本でFXが始まってから最大の人数となる悲劇的な事態に追い込まれました。

ただ海外FXでゼロカットシステムが実装されている業者で取引をしていた個人はすべて追証を免れ、このシステムがあるだけでも海外FXをしていてよかったという声が聴かれました。

しかし欧州圏では顧客に損失を請求できないことからアルパリが破綻、国内にあった別法人も事業をたたむことになり、FX業界でもかなりの影響が出ました。

今回スイス中銀がどこまで為替介入にこだわるのかはわかりませんが、少なくとも7年前にこうした壊滅的な政策を打ち出したことは間違いないので、相当注意して取引しなくてはなりません。

同じことが再度起きるとは思えませんが、特定のレベルでの為替介入の実施というのは常に大きなリスクが伴うものです。