18日 国会衆議院決算行政監視委員会

4月18日衆院決算行政監視委員会に登場した黒田東彦日銀総裁は、大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる、と久々に円安へのけん制発言ともとれる内容を口にしました。

しかし円安は全体として日本経済にプラスとの持論を繰り返すなかでの部分的な内容となったことから、126.788円まで上昇したドル円はその後50銭程度円高に引き戻されましたが、口先介入的効果はそれだけで126円台の相場はさらに上伸しそうな雰囲気を作り出しています。

黒田総裁は先週13日、通常なら市場が一切注目しない信託協会でのあいさつで円安にメリットがあると言った発言をしたときにも、待ち構えていた投機筋に一斉に買い上げられ126.300円超のレベルまで跳ね上っており、すでにその存在と発言自体が円安を加速させることになりつつあるようです。

投機筋を主体とした市場参加者は、完全に日本の財務省と日銀がどこまでの円安を許容できるのか試しにかかっているように見え、ここ20年来の為替相場ではかつてないような円安シフトが続きそうな状況になってきています。

ドル円18日の動きを示す15分足

目先最大の問題は4月28日の日銀政策決定会合

今月の最終週27日と28日には日銀政策決定会合が開催されますが、市場はすでに日銀が国債費の急激な上昇を抑えるために利上げなど一切できないことを見透かしている状況です。

現状維持の政策発表が行われ、さらにその後黒田総裁が円安には依然メリットが大きいといった発言を繰り出した場合には、そこから相当な円安が走る危険性がでてきています。

28日までは1週間ほどの時間が残されていますが、28日段階でドル円が130円を超える水準でこの日銀の政策決定会合を迎えることになれば、135円といったとんでもない水準まで円安が進行するリスクを考えておく必要があります。

年初は130円とか135円というレベルは相当遠かったのでにわかには信じられませんでしたが、ここへきてそれが現実のものになろうとしている点は非常に恐ろしさを感じます。

現段階では日銀がこの月末の会合で緩和をやめる、もしくは利上げを始めるといった大幅な政策変更を出してくる可能性は極めて低く、黒田総裁が会見で口を開くこと自体がとてつもない円安リスクに繋がりそうです。

むしろ来年の4月までの任期を繰り上げて総裁自身が早めに勇退されると言ったことでもあればそれが最大の円安けん制になりそうですが、それも期待薄でなにかファンダメンタルズ的な変更がない限り、ドル円は市場参加者の想定を大幅に上回る上昇に見舞われる危険性が高まりを見せています。

足もとでは米国はまったく円安を危惧していない模様

鈴木俊一財務相は、20日から米ワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席するのに合わせて日米両政府は現地で財務相会談を開く方向で調整しているようですが、米国政府側は現在ウクライナ情勢とインフレ制圧に躍起になっています。

景気が悪くなると登場するドル安政策も今は持ち出してくるつもりがまったくないようで、日米の金融当局が連携してドル円のドル高円安をけん制したりすることは全くなさそうです。

まして強調介入などする可能性はゼロで、その手のオペレーションをするとなると日本だけが単独で行うことを余儀なくされ、ほとんどその効果を期待することはできない状況です。

こうしたことは投機筋も十分に見通しており、本邦の金融当局関係者が口先介入的発言をしてもまったくワークしないことに強く寄与しているようです。

円キャリートレードはすでに始まっている可能性も

今回のドル円の円安進行では投機筋の円キャリートレード、つまり円で資金を調達して海外の商品やほかの通貨での取引に利用するといった形が強まり、2000年頃以来の円キャリートレードが爆発的に増加しそうですが、足もとの市場ではそれがすでに始まっているという指摘もでています。

本邦の機関投資家もここからドル円水準が大きく下がらないと見ているようで、すでに125円レベルから買いで参入しはじめているといった情報も聴こえてきます。

本邦実需の輸入勢は慢性的なドル不足からここまで高い水準でも連日仲値には決済を持ち込んでおり、ドル円はここでも下がる気配をみせていません。

現在の相場は投機筋主体で日銀を試す形で大幅にドル高円安が進んでおり、どこかでこうした投機筋の反対売買がでればそれなりの値幅で下落することも十分に想定できます。

しかし上記のような円売りドル買い需要が延々と続くかぎり、下げても買い向かう向きは相当沸いてきそうで、円安がもとに戻ることは全く期待できないというのが正直なところです。

こうした状況下で4月28日の日銀政策決会合が円安をうまく乗り切れるのか、暴騰のスイッチとなるのかが非常に注目されはじめています。