日銀黒田総裁が6月6日東京都内で講演し、国内で商品やサービスの値上げが続出している状態に対して日本の家計の値上げ許容度も高まってきているという見解を示し、普段は日銀などに興味を持たない国民からも猛烈な総スカンを食らい始めています。
さらに、持続的な物価上昇の実現を目指す上で重要な変化と捉えることができると発言しています。
黒田総裁は仮説した上で、新型コロナウイルス禍による行動制限で蓄積した強制貯蓄が影響していると指摘していますが、果たしてそんなことが現実に起きているのかが疑われます。
黒田総裁は3日の参議院予算委員会において、立憲民主党・白真勲参院議員から最近食料品を買った際、以前と比べて価格が上がったと感じるものがあったのかどうか、ご自身がショッピングしたときの感覚、実感をお聞かせくださいと質問されたのに対し、スーパーに行って物を買ったこともありますけれども、基本的には家内がやっておりますと浮世離れの返答し、最寄り品の価格がどれだけ高騰しているのかについては全く認識していないことを露見させたばかりの直後の発言なだけに、国民の反発は猛烈なものとなっています。
2020年1~3月のGDPギャップはマイナス3.7%で乖離は継続
時を同じく、内閣府が発表した2022年1~3月の国内総生産(GDP)の1次速報値を反映したGDPギャップはマイナス3.7%で、約21兆円も需要は不足しています。
このギャップはすでに2021年10~12月期から連続10四半期延々とマイナスを継続しており、重要は全く回復していないことを明確に物語っています。
黒田総裁は一体何のデータを見て、日本の国民は家計の値上げ許容度も高まっているという発言をしたのかは不明ですが、ほとんどの家計は必要不可欠なものは一銭でも安く手に入れることに奔走しており、負担の増えた部分は他のどこかを切り詰めることでなんとかしているのが実情で、コロナ禍にできた強制貯蓄を取り崩して物価上昇に耐えている家計がどれだけ実在するのかは大きな疑問が残ります。
国民の多くがこの発言を聞いて怒り出すのは無理もないところで、個人消費という極めて現実的な部分を日銀は全く把握できていないことがこの発言で実に良くわかる状況となりました。
黒田妄言を見て猛然とドル円買いに走った投機筋
日銀の要人が緩和継続や円安を容認するような発言を繰り出すたびに、向きになってドル円を買いあがるのが海外の投機筋、というのがすっかり定番となりました。
今回の黒田発言を受けても同じような動きがではじめ、ドル円は5月の年初来高値を一気に飛び越えて132円台に突入したあと、その後の東京タイムでも値を上げる動きになり、7日のロンドンタイムに入る時点ではすでに133円をつけるという猛烈な円安展開となってしまいました。
今週のどこかで132円レベルまで上伸するのではといった予測は完全に抜かれた状況で、むしろ週内に135円に到達してしまうのではないかといった観測も聞かれ始めています。
133円を超えたドル円相場はここから先の上にはほとんど抵抗線がなく、過去につけた135円台の高値が一応のレジスタンスラインとなるものの、それを抜けると150円方向まで突っ走るリスクも高まるところです。
相場のことなので一方的に高値を目指すことはなく、ある程度時間との調整も考えられるところですが、果たしてここからどこまで上昇してしまうのかが今後の大きなポイントとなりそうです。
一度円安になるとそのスピードは猛烈で、順張りでついて行くとしても相当な覚悟をもって買い向かわざるを得ないのが実情であり、爆上げ相場もトレードするのは結構苦労することになります。
今のところドル円がどこまで、いつまで上昇するのかは全く誰にもわからないので、とにかく引き付けて買いから入り、だめならあっさり損切して入りなおすといった素直なトレードが必要になるでしょう。