足もとの相場では、日銀を相手にして投資ファンド勢の一角が日本国債売りと円売りを並行して仕掛けており、見た目以上に相場は凄まじい様相になり始めています。
主要各国の中銀が相次いで利上げを行う中で日本だけが量的緩和を全くやめる気配がなく、さらに円安も基本的には大きなメリットがあると日銀黒田総裁や政権幹部が口にしていることから、投機筋は日本政府、財務省、日銀がどこまで円安に耐えられるのか、3月から投機筋は大挙してこれを試しにくる相場が3月から延々と続いています。

また国債市場も日銀が10年債を無制限に0.25%で買い付けるという指値オペを続行中で、こちらも幾つかの投機筋が国家管理相場がいつまで持つのかを試すような動きが通貨と並行して示現しているところです。

為替は日銀が金融緩和政策を変えないかぎり続きそうな状況

ドル円4時間足推移

ドル円相場は135円をつけたところで一旦いいところまでやったのではないかといったテクニカルアナリストの見方がありましたが、6月第4週とうとう137.700円まで上値を試す動きとなりました。
その後はリカクがでたこともあって一旦下落し、また23日に発表された米国のISMなどの経済指標が予想よりも弱かったこともあって、上値から2円以上下落するなど結構激しい上下動を伴って推移しはじめています。
ただ、平時ならば十分に一相場やった感がありますが、今回のドル円の上昇はここで終わる可能性はかなり低くなってきています。

恐らくここまでくれば7月、8月のうちに140円を試す可能性はかなり高い状況です。
23日の東京タイムでは、中尾元財務官が円の下落を食い止めるために為替市場への介入の可能性を排除することはできない、と述べたことからアルゴリズムが反応し、135円台前半まで下落する場面もありましたがその後はある程度値を戻すこととなっており、口先介入の効果はごく一時的なものとなっています。
財務省、日銀ともに緩和を継続する一方で、為替介入で円安を阻止するというのは国際的にみても賛同を得られない状況であることから、本当に140円をドル円が超え始めた場合、渋々金融政策を変更しイールドカーブコントロールの上限利率を引き上げるなどの具体的な施策を繰り出さざるを得なくなるのではないかという見方も強まっています。

黒田総裁が本当にそうした政策変更をするのかは不明ですが、このまま何もせずに緩和を続ければ年内のかなり早い時期に150円に到達してしまう危険性が高まります。

国債市場の日銀介入買いは為替よりもさらに深刻な状況に

ドル円の大幅上昇もさることながら、さらにリスクが高まりを見せているのが国債金利の上昇です。
イールドカーブコントロールについては黒田総裁も異例の自信を覗かせていますが、すでに先週一週間で0.25%以下に抑えるために長期債も含めて11兆円も買い向かっており、毎週この調子で買いオペを行えば1年後にはすべての既発債を日銀が買い取ることになりますが、市場の性格上そんなことが実現することはありません。

6月に525兆円日銀が保有していた日本国債の含み益は完全に消滅し、ここからの買入れはさらに大きな含み損を抱えることになり、実質債務超過は国際社会の日銀の信認性を著しく欠くものとなるのは間違いないありません。
8年前までどこの中銀も行えなかったイールドカーブコントロールというオペレーションが破綻をきたすのは時間の問題で、投機筋は完全にそれを狙っている状況です。

自国の国債の買入れであれば日本円の紙幣を大増刷すればまだ買入れは出来る状態なので、ヘッジファンドとの闘いで簡単に負けることにはならないと思われますが、毎週11兆円近い買付をしても金利を抑制できないのもまた事実で、このまま日本国債の買付を続けていけば市場自体が崩壊する危険性が高まります。

日銀がヘッジファンドとの戦いに負けるようなことにならないことを祈りたい気分ですが、状況は益々悪化しています。
このままでは世界第三位の国債市場はまともに機能しなくなり、しかも国債のほとんどを買い入れる日銀が抱える含み損も過去に例を見ないほど大きなものになるのは間違いなく、このままではごく近い将来すべての市場参加者は、資本主義の先進主要国の中で唯一国債市場を中銀自らクラッシュさせて終わる光景に直面する可能性に高まりを見せています。

国債金利の暴騰は価格の下落を招き、ドル円は暴騰後に一気に円高方向に動くことになりそうで、これで円安に終止符が打たれることになるかもしれませんが、こうなると債券も為替も相場はめちゃくちゃとなり、日銀の信認性が維持できるのかも大きな問題になるでしょう。

1992年には英国中銀とジョージソロスがポンドを巡ってすさまじい戦争を繰り広げ、結果英国中銀サイドがまさかの敗北に追い込まれたという不幸な事態がありましたが、今回日銀がヘッジファンドの売り攻勢に敗北を認めることになればさらに大きな問題になりかねず、今後の推移から目が離せません。