6月30日、2022年度の半期末となるNY市場では通常リバランスなどから上昇するはずの米株市場が下落し、例年とは異なる動きを強めることとなりました。
一方米債市場は10年債利回りが心理的に重要な節目である3%を一時割り込み、インフレよりもリセッションに対して市場が警戒を強めていることが示現しています。
6月にはインフレ懸念や金融政策引き締め見通しを背景に一時3.5%近くまで上昇した米10年債ですが、一転して大幅下落となり相場のセンチメントが劇的に変化したことが見えてくる状況です。
こうなると当然日米の金利差から大幅上昇を遂げてきたドル円も反転下落となり、すでに135円台で推移するようになってきています。
ここからはインフレとリセッションの綱の引き合いということになりそうで、果たしてFRBはこの状況にどう対応していくのかに大きな注目が集まりはじめています。
完全にリセッション突入ということになれば米株市場はさらに下落することは間違いなく、2008年のリーマンショック並の下落となればあらゆる資本市場に衝撃が走ることになり、為替にも大幅な影響が降りそそぐことが容易に予想されます。
FRBは利上げとQTを果たして継続できるのか
7月も米国ではFOMCが開催されますが、また75ベーシスポイントの利上げを継続するのか50ベーシスポイントに引き下げるのかに関心が集まってきているものの、このままリセッションに突入することがあった場合FRBが利上げとQTを継続できるのかが大きな問題になりそうな状況です。
バイデン政権は目下のところガソリン価格の高騰を背景に国民の支持率を大幅に下げる結果となっており、一部のメディアではバイデンフレーションという造語も作られたことから、中間選挙対策としてはなんとしてもインフレを制圧することが最大の課題となっており、FRBパウエル議長もそれに最大限に応えざるを得ない状況にあります。
ただ、このまま利上げとバランスシートの縮小を行った場合、完全にリセッション入りし株価が大幅下落することも十分に考えられるだけに、インフレ対策のたずなをどこまで引き締めていくことができるかが大きなポイントとなりそうです。
一般的にはリセッションが到来するので、足もとで進行するインフレ対策を緩めるというのは考えられませんが、FRBとしてはあえて一旦緩和巻き戻しを緩めざるを得ない可能性もあり、果たしてそれがうまくいくのかどうかにも注目が集まります。
FRBの要人はこれまでリセッションへの突入はありえないと否定してきましたが、ここでも宗旨替えを考えざるを得ないのが現実となり、政策の舵取りは一層難しいものになるでしょう。
ドル円上昇の雲行もおかしくなる可能性
6月ドル円は日米の金融当局の明確な政策差を背景に、日銀が延々と10年債の指値オペ、さらに長期債の買入れを行ったことから、事実上の債券を利用した円安介入を延々と行っているのと同じネガティブな効果を市場で発揮することとなり、とうとう137円にまでタッチする相場展開となっています。
140円まではあと3円ほどとなり、4月のような猛烈な買い圧力がでればここからほんの数日で140円に到達してしまいそうな雰囲気も漂っています。
しかしながら米国のリセッション懸念を背景として米債利回りが大きく低下し、さらに株価もここから大幅下落で2008年のような状況に陥るとなると、もはやドル円の上昇を望むことはできなくなりそうで、7月相場はそれを見極める重要な時間帯になりそうです。
すでにドル円は上昇トレンドが出始めてから4か月を経過しており、さらにトレンドが継続するとしても8月まで引っ張ることができるかどうかは微妙で、本来であれば7月中、少なくとも日銀政策決定会合の発表がある21日あたりまでに140円をつけに行けないと、さらなる上昇を期待することができない状況です。
すでに7月は年後半の相場になりますが、ここからはトレードも相当難しい時間帯に突入することになり、的確な状況判断をもとにトレードの方向性を決めていくという慎重さが求められます。
とくに米株の急落と米債金利の大幅低下については非常に注意が必要で、状況変化によっては即座にポジションを落すなどの適切な対応が必須です。
万全の対策を施して相場に臨まなくてはなりません。