市場が待ちに待ったジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演が行われ、市場は日本時間の26日午後11時からの発言に釘付け状態となりました。
30分予定されていた講演は相当あっさりしたもので、たった8分、1301語足らずで終了しましたが、内容は極めて明確で、物価の安定を回復させるには景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高いというのが中心的な発言で、歴史は早急過ぎる政策緩和を強く戒めていると、ここの所の市場の安易な政策緩和期待を否定する内容となったのが非常に印象的な講演となりました。
また82年のジャクソンホールでの初会合開始時に釣り好きでこの地が選択されたというポールボルカーを引き合いに出して、70年代のインフレファイターとして歴史的に名を馳せる彼の名を上げつつも、パウエル自身がインフレ退治に専念する事を宣言し講演を終えています。
この講演を受けて激しいダメージを受けたのは米株で、前日結構な戻りを試していた株価は徹底的な下落に直面することとなっています。
NYダウはマイナス1008ドルという下落幅で、NASDAQは-497、S&P500も-141.46といった具合でかなりの下げを記録することとなり、米債金利は短期から長期まで3%台に乗る動きとなっています。
この金利上昇に相関して上昇したのがドル円で、137.500円台で週の取引を終えています。
パウエル議長は9月のFOMCをどうするかについてはデータを見たうえで決めるとして、一切言質を取られるような発言をしないまま講演を終了していますが、このままで行けばそれなりの金利の上昇を継続するのは間違いなく、米株がここからどこまで下落していくのかにも大きな関心が集まりそうな状況になってきました。
すでにこのコラムでもご紹介しております通り、アナログチャートで見ると足もとのS&P500相場は2008年におけるそれとの相関性が91%以上と高まっており、下手をすれば大きな下落に見舞われるリスクも高まっていることから今回のパウエル講演がその引き金を引く危険性もありそうで、11月の中間選挙を控えながら株価がどう動くかが市場の大きなテーマになってきていることを実感させられます。
ドル円はどこまで上値を試すのかに注目
ジャクソンホールのパウエル講演待ちとなった先週一週間、ドル円は135.800円と137.500円の間を上下動する結構不可解な動きに終始しましたが、週明けは明確に上値追いを試すことになるかが大きな注目ポイントになりそうで、137.500円を明確に上抜けることができれば今年7月14日に試した高値139.40円を再度試しに行く動きも期待できそうで、週明けからの動きを注視していきたいところです。
週末金曜日には早くも雇用統計の発表を控えており、その数字次第ではいよいよ140円に接近することもありそうですが、9月20日からのFOMCまでは引き続き上下動を伴った動きを継続することも考えられることから、実際にどのような動きをするのかを見たうえで先行き判断を行いたい状況です。
下値としては135.800円を維持できれば大きな下落にはならなさそうな気配で、逆に押し目買いのチャンスになることも考えられます。
ユーロドルは続落に引き続き注意
先週明確にパリティ以下に沈み込むこととなってしまったユーロドルは、多少いい経済指標がでても全く1.0から上に大きく戻れないままに推移していましたが、26日のジャクソンホールのパウエル講演に絡んで1.008レベルまで戻したあと、講演の結果を受けてまたパリティ以下に沈み込んで週の取引を終えています。
ユーロ圏における激しいインフレを受けて、オランダ中銀の総裁などからはこの先6週間毎に明確に利上げを進めるべきといった積極的利上げ策が聴かれていますが、すでにリセッション入りしているような加盟国もあることから、ECBが米国FRBのようにアグレッシブな利上げを持って市場に対抗してくるのかが大きな関心事になりつつあります。
逆に経済状況の悪い南欧諸国のことを考えて利上げを止めるようなことになれば、ドルとのコントラストはさらに広がることからユーロは対ドルでより売られることも想定せざるを得ず、こちらもここからのECBの政策対応次第の状況が続きそうです。
為替市場は主要国の中央銀行の政策次第で動く相場になっているので、常にその領域の情報には敏感になっている必要がありそうですが、株価が大きく下げた場合リスクオフでそちらに引きずられるリスクも存在することも意識しておかなくてはなりません。
いよいよ週明けは9月相場に突入することになります。
市場参加者もフルに戻ってくることになり、これまでとは異なる動きが示現することにも備えておく必要があるでしょう。