今年のジャクソンホールのシンポジウムは、オンラインではなく久々にリアルの会場開催となったことに加え、FRBパウエル議長の講演が世界的な注目を集めることとなったことから、異常な関心がパウエル議長に集中することとなりました。
しかし講演自体は30分の時間に対してたった8分ほどのかなり短いものとなったことから、多くの市場参加者はその真意を分析することに終えることとなってしまいました。

実はそんな中で27日パウエル議長の後に登壇して講演をした日銀黒田総裁の内容が、またしても円安を加速させることになってしまいました。
一旦139円をかすったドル円相場はそれ以上一気に上昇はしていませんが、9月のFOMCでの利上げの%が決定した段階でまたその差は歴然となることから、まだまだ上値を試す可能性がでてきているようです。

毎度お馴染み一言一句変わらない黒田の緩和継続発言

Photo Bloomberg

来年4月で退任のため、今回の参加が中央銀行総裁としては最後のタイミングになった黒田総裁は、市場から期待も注目もされていない中で講演を行ったことから、内容はいつもながらの代り映えのしないものとなりました。
しかしFRBが積極的に利上げを行う意思表示をした一方で緩和継続をどこまでもやり遂げるとした発言をしたことから、日頃日本円に興味のない向きまで円を気にするようになり、結果週明けの月曜日の東京タイムでは瞬間139円にタッチするまで円安が進むこととなりました。

黒田総裁は日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるものだとしたうえで、賃金と物価が安定的かつ持続可能な形で上昇するまで、持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないとパネル討論会後の質疑応答で述べています。
また日本のインフレ率については、年内は2%または3%に一時的に近づく可能性があるが、来年には1.5%に向けて再び減速すると予想しているとも述べ、日本の状況が米国や欧州のインフレとは全く異なるものであることを強調しています。

米国FRBとの政策コントラストが更に明確になりドル円は上昇円売りに

講演と討論会で黒田総裁が発した内容は日本国民にとっては新しいことでもなく、およそ話題になるようなものではなかったはずですが、米国、欧州圏ともに9%を超えるようなインフレに見舞われている中にあって本邦のみ金融緩和の巻き戻しは一切行わず、ここからもむしろ緩和を延々と続けていくと発言した黒田総裁はまったく別の意味で注目されることとなり、ドル円は円売りからまたしても139円台にタッチするという円安を示現することになりました。
この総裁が何か発言すれば必ず円高というアノマリーは見事に守られることとなりましたが、市場では円に関心のなかった向きまで相場に引き入れてしまい、非常に迷惑であるといった発言も飛び出す始末で、ここからのドル円相場の展開が思いやられる状況になりつつあります。

日米の実質金利が3%を明確に超えてくると、過去の実績から見ても円キャリートレードも激増することになるためドル円は上昇しやすくなり、市場の力で益々円安が進むリスクが高まることになります。
ただし、円キャリーとレートのようなもので上昇した相場はどこかのタイミングで一気に巻き戻しになることもあるため、ここから秋口ドル円が上昇してもいきなり何かをきっかけにして反転下落するリスクも常に意識しておく必要があります。

米国市場はFF金利が米10年債の金利を大きく上抜けると、大幅に相場が下落するリスクが高まると言われています。
こうなるとここからのドル円の下落は米株の大幅下落に起因するものとなる可能性もあり、上昇はしても常に下落の危険性も意識したトレードが必要になりそうです。
黒田総裁の任期はあと半年ほどですが、後任の総裁が決定したところで相場が動くことも考えておかなくてはなりません。