NY市場がレイバーデー明けとなる9月6日、東京タイムから値を上げ始めたドル円はその後ロンドンタイム、NYタイムと上昇を継続し、7日の午前1時半すぎにはとうとう143.076円という年初来高値を更新しました。
例年このレイバーデーから相場の流れがガラッと変わると言われますが、今年はどうやらその典型のようで、各国主要中銀が続々と利上げを打ち出そうとする中でなにもしない緩和継続の日銀下の円が対ドル、クロス円でも狙い撃ちされています。

Data Tradingview

当面のターゲットは147円超か

過去のチャートを見ても抵抗線の存在しないドル円は、もはや気が済むところまで上げざるを得ないのが実情で、当面は1998年6月につけた147円がターゲットになりそうな状況です。
すでにこのコラムではご紹介済みの下のチャートですが、とうとう24年ぶりにこの140円台の攻防が始まっていることがわかります。

ただ、過去の例でもわかるとおり、急激な円安は時として逆に大幅な円高に反転するきっかけにもなります。
ここからどうやって相場の上昇についていくかはかなり悩ましいものがあり、低水準からずっとポジションを維持している向き以外はかなり取引しにくい時間帯に入ってきそうな状況でもあります。

すでに円の実質実効レートは1985年のプラザ合意以前のレベルに上昇

140円超のドル円の水準は24年ぶりとなりますが、物価などを調整した実質実効レートベースで見ると、米国が大騒ぎして主要国を呼びつけ無理やりドル安を示現させた1985年のプラザ合意レベル前まで円安は進行しており、不況期の米国なら完全にクレームをつけてくるレベルに達しています。
ただ、足もとでは米国もインフレに苦しんでいるため今のところ何も言われずに推移していますが、本格的なリセッションが進むと声高にドル安を要求してくるのが米国のやり口なので、ここからどこまで我慢するのか、どのタイミングでまたドル安を要求してくるのかに大きな注目が集まるところでもあります。

24年前、日本は単独介入で円安を阻止しようとしていました。
今年の今の状況を見ていると米国から単独介入すら強要される可能性は低く、下手をすればこのまま150円超まで円安が進んでしまう可能性は相当高い状況に置かれています。

米株の大幅下落に伴うリスクオフの円高巻き戻しには注意が必要

市場は完全に円安を睨んだ相場展開を始めていますが、誰しもが同じ方向を向いてトレードし始めるとき、特にじり高ではなく一気に上昇する相場には急激な反転のリスクも伴うことになるため、相当な注意が必要です。
相場自体の荷もたれによる反転下落がそれですが、現状の相場では米株がここからさらに大きく崩れだすことでドル円がそれに引きずられて円高方向に大幅下落することも、十分に想定しておきたいところです。

とくに激しい株式市場の下落局面では、円安から円キャリートレードを行っていた投機筋が一斉に巻き戻すことが起こりうるものです。
ドル円は年初からすでに27円という凄まじいレベルまで上昇していますが、巻き戻しが起きれば簡単に10円以上下落することもありえるので、決して呑気にはしていられない時間帯が続きます。

ここまで来ると最大の円安対策は次期日銀総裁人事の前倒し発表か

こうした相場環境では、円安をとにかく止めるのは介入ではなく日銀が緩和政策をやめることが必然の要件となりますが、8月総裁任期期間中最後のジャクソンホール会合に出席した黒田日銀総裁はあえて日銀が緩和継続するしか道はないといった講演を行い、改めて市場に円安を浸透させてしまうというプロモーションを展開してしまっています。
黒田総裁が早期辞任をするということも考えにくい状況ですが、唯一次期総裁人事を前倒しで日銀が発表し岸田政権がそれを承認するような方向になれば、ドル円の動きも大きく変化する可能性がでてくることになります。

9月段階で6か月先の人事を前倒しで発表するというのは難しいものがありそうですが、それが相場に与えるインパクトは格別に大きいものになりかねません。
本来は岸田政権ももっと本腰を入れて円安阻止対策に臨む必要があるのですが、現状ではまったくそうした動きになっていないことも大きな問題です。

今のペースでドル円が上昇を続ければ月内に150円に本当に到達すしてしまうことも覚悟しなくてはならないのが現状です。