皆さますでにご案内のとおり、先週3月12日からの一週間は米国の夏時間スタートと共に凄まじい相場乱高下の一週間となってしまいました。
一週間を経てとりあえず大きな問題は修復しつつありますが、果たしてこれで週明け以降正常軌道に相場が回帰できるかどうかが大きな注目点となりそうです。
多くの投資アナリストは足元の状況が2008年の金融市場で発生した問題とは大きく異なるものであり、リーマンショックのようなことが起きる可能性は低いと指摘していますが、逆に特別な問題を抱えているわけではなかった米国の地銀があっさり破綻してしまったことに大きな問題があるとの指摘もではじめています。
SVBで起きたことは特別なものではなかった点が重要でひっかかるところ
SVBはカリフォルニア州でスタートアップ企業を支援する銀行として成長を果たしてきた存在で、事業規模としては本邦の地銀の上位クラスに匹敵するのでリーマンブラザーズの破綻のような衝撃的な問題は起こらないであろうことは最初からわかっていた話でもありました。
案の定米国財務省とFRBが連携して預金者全額保護という異例の発表をしたことから、SVB問題は一旦終息を迎えることとなりました。
そして先週末SVBの親会社SVBファイナンシャル・グループが、ニューヨークで連邦破産法11条の適用を申請しました。
シリコンバレー銀行は先週FDICの管理下に置かれ、米連邦準備制度の一部となっているため破産法適用の対象にならないため結局親会社が破産申請となりましたが、一時相場はこれに反応し下落を加速する場面もあり状況が正確に把握できないことを目の当りにする相場となってしまったことは言うまでもありません。
ただ、このSVBの破綻を冷静に見てみると、彼らは確かに預金と言う短期資金を米国債やMBSなどの長期資金で運用してしまい、直近の預金の大量引き出しに対応できずに破たんに追い込まれたことは間違いありませんが、投資先としてはもっとも信用度の高い米国債に振り分けているため本来このような劇劇な破綻に追い込まれることはなかったはずで、預金の引き出しの殺到に対応できなかった銀行の失態があらためて顕在化するところとなっています。
多くの米国の一般的な銀行はここまで激しい状況に追い込まれていないとしても似たような状況であることは間違いなく、SVBのような銀行が簡単に破綻するということが一体どういう状況なのかをもっと精査すべきものであるでしょう。
CSの経営危機は別に米国から飛び火したものではない
SVBの破綻の直後に明らかになったクレディスイスの経営不安はメディア上では米国の金融危機が欧州に飛び火したかのように語られていますが、時系列的にはそう見えても必ずしもそうではないことが明らかになっています。
クレディ・スイス・グループは2022年の年次報告書と報酬詳細の公表を当初3月9日に発表する予定でしたが、8日夕にSECから連絡を受けて延期し、その結果がSVBの破綻劇のあとになっただけで、この事実を見る限りSVB破綻のほうが先に示現したただけで米国から欧州への金融危機連打が起きたわけではないことが見えてきます。
反対にクレディスイスの問題が先に市場に示現していたら市場の反応もかなり異なったことが予想されます。
SECは2019、20会計年度に関するキャッシュフロー計算書に同行が加えた修正および関連のコントロールについてコメントと質問をしたことに起因するもので、こうしたSECの注文はそれほど珍しいことではないだけに結果的にこうなってしまったという感は否めません。
ただしクレディスイス・通称CSの問題はデリバティブにも絡む相当深刻な問題を抱えていてSVBのような単純な構造ではないので、とりあえずスイス中銀が7.2兆円という巨額な融資を行っても安全な状況になったとは言えず、週末突然UBSが買収する報道が出ましたがこれが現実のものになるかが同行の先行きと金融市場に与える影響を大きく左右することになりそうです。
週明けの最大ポイントはFRBの利上げの可否
22日、日本時間の23日午前3時には早くも3月のFOMCの政策決定が発表されます。
ECB理事会がクレディスイスの一件を横目で見ながらも0.5%の利上げを行っているためFRBは0.25%の利上げを行うことになるのではないかという予測がかなり高まっていますが、その一方で一旦利上げを見送るのではないかといった観測が高まっているのも事実で、FRBの現実的判断がどうなるのかが非常に気になるところとなってきています。
クレディスイスの件を除けば米国の金融業界の懸念事項は一旦解消しているので、この場に及んでFRBが利上げを一旦保留するというのは反対に相当深刻な時代を示唆することにもなりかねず、FRBは相当難しい判断を迫られることになりそうです。
ドル円は下落を加速しているがこれが年度末月末に向けて継続するかに注目
為替の世界では完全にドルの動向に注目が集まっていますが、先週末上昇するかに見えたドル円は諸般の状況から大幅下落を余儀なくされ131円台で週の取引を終えています。
週明けさらに下値を試すことになるのか一旦は戻りを示現するのかが気になるところですが、年度末については例年ドル高が示現するだけに本邦勢のレパトリを控えて果たして相場がさらに下押しするのかあるいは上方向に戻すのかをしっかり確認してトレードしたい状況が続きます。
テクニカル的にはまだ下方向に向かう可能性は高くなりますが、シーズナルサイクルから考えれば必ずしもそうではないことが悩ましい一週間になりそうです。
いずれにしてもボラティリティが大きく難しい相場は続くでしょう。