今月も日銀政策決定会合が近づいていますが、ここのところの植田総裁の会見における先行きの見通し説明を聞いていると向こう1年は全く政策変更の余地がなさそうに見えてくることから、海外勢を別として本邦の市場参加者はほとんどが無風の決定会合を想定してしまっているます。
ところが本邦メガバンク3行のトップは相次いでメディアのインタビューに答え、ごく近い将来日銀が政策変更すると予測をしていることが注目される状況になっています。
一体どうしてこうした見立ての違いが起きるのかが気になるところで、なにか内密に日銀から情報を得ていることも考えられるだけに、この食い違いは非常に大きな関心を集めるポイントです。

メガバンクは別情報を日銀から得ている可能性

植田日銀総裁のモラトリアムな発言を聞いていると、日銀は未来永劫利上げなど行わないのではないかというイメージが強くなります。
しかし、国内の幾つかのメディアがメガバンクのトップにインタビューを試みた結果が掲載、開示されていますが、3行のトップともにYCCを中心とした日銀の政策が市場全体が考えているよりも早期に実施されるであろうと予測していることが明らかになっています。
日銀の政策変更で自らの銀行の経営に大きな影響が出る本邦のメガバンクのトップが、3行ともに早期の政策変更が行われるであろうことを織り込んでいるというのはかなり重要な情報で、ほとんどの市場参加者が政策変更について全く期待していない中にあって経営に大きな影響を被るメガバンクだけは日銀から特別な情報をえている可能性も否定できず、我々個人投資家が植田総裁の発言から受けている政策の印象とメガバンクの認識の仕方が結構大きく違っている点は注意しなくてはならない状況になってきています。

7月の日銀政策決定会合には何等かの変化が訪れることに最大の注意が必要

6月の政策決定会合は米国FOMCの後に開催予定ですが、今月に関してはさすがに変更はないものと思われるものの、次回7月については総選挙がなければYCCをいじるといった政策変更を持ち出してくる可能性があることを認識しておかなくてはなりません。
国内メガバンクはゼロ金利時代に大量に日本国債を購入し保有しており、利上げが起きるというのは含み損を抱えることにつながるだけに悠長に利上げを良しくすることなどできない立ち位置にあります。
そのためメガバンク3行が揃いも揃って早期に利上げの政策変更があると予測しているということは、それが現実のものになる相当な確率を秘めているといっても過言ではない状態です。
いきなり利上げという訳にはいかないと思いますが、イールドカーブコントロールの上限を大きく引き上げる、もしくは撤廃するといったことは十分に考えられる話で、不意打ちのように政策決定に盛り込まれた場合ドル円が大きく円高にシフトするリスクが相当高まることになります。

YCCの上限を1%に引き上げた場合、ドル円は瞬く間に5円から10円円高にシフトするであろうというアナリスト予測も出てきているので、YCCの見直しは財務省による円高介入より劇的に効果的なドル円の価格抑制をもたらすことになります。
このあたりは植田総裁も十分に理解しているものと思われますが、とにかく黒田緩和路線の継続という前提条件は余計な話となり、なによりもこのことが安易な政策変更に手をつけづらい状況となっています。
また任命者の岸田首相との距離感の問題もありそうで、日銀総裁のポジションは結果的に極めて政治色の強いものになっていることを感じさせられます。
いずれにしても7月以降の日銀政策決定会合には十分に注意すべきで、リークの報道が突然飛び出すことにも注意が必要です。