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バイデン大統領は国家経済会議、通称NECの議長にFRBのブレーナード副議長を指名し、ブレーナード氏はFRBを去ることとなりました。
ブレーナードは以前から民主党政権の秘蔵っ子と呼ばれる存在で、当初は財務長官に任命されるという説もありましたし、FRBではパウエルの後任の議長に就任するのではないかといった噂もあったほどでしたが、結局NEC議長に指名されたことからFRBからあっさり離れることとなりました。

過去1年あまりFRBの運営は実はブレーナードが担っており、ほとんどの戦略は彼女が立案しパウエルはそれに乗っていただけという見方もありました。
それでも年初からのFRB内では完全なハト派のブレーナード派と、それなりに強気にインフレに対応しようとするパウエル派が相当な綱引きを展開してきただけに、ポストブレーナードでパウエルがどのように政策決定していくのかが注目されはじめています。

民主党も人材不足があるのかも知れませんが、あっさりブレーナードがNEC議長に栄転してしまったのはかなり意外で、この先がどうなるのかが大きな注目を集めています。
FOMC議事録の内容にも関心が集まるところですが会議直後の議事録はミニッツであり、これまでも議長判断で強調ポイントなどはデフォルメされてきたという経緯があるだけに本当の会議の内容はよくわからず、とにかくこれからのFOMCとパウエル発言にさらに市場の関心が集中しそうな状況となってきているようです。

後任の副議長はシカゴ連銀総裁オースタン・グールズビー氏

ホワイトハウスはブレーナードの後任として、米シカゴ連銀総裁に先月就任したオースタン・グールズビー氏の起用を検討中とのことです。
グールズビー氏はオバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めていました。
シカゴ連銀総裁に就く前はシカゴ大学の経営大学院ブース・スクール・オブ・ビジネスの教授なのでいわゆる学者肌の人物で、かなりハト派の姿勢をもった人物とされています。
当面はパウエルのもとでその政策に従う存在として機能することになるのではないでしょうか。

パウエルはさらに利上げを進めるのかどうかが大きなポイント

昨年12月段階のFOMCメンバーのドットチャートを見ると、投票権のない地区連銀総裁も含まれていますが、2023年末は4.875%が2名、5.125%が10名、5.375%が5名、5.625%が2名となっており、足元の経済指標がかなりインフレの進行を加速させていることがわかる状況下では、FF金利のターミネーションレートも5%後半に移行することが十分に考えられる状況になってきています。

パウエル自身はトランプ政権時代にFRB議長に任命され、本人は共和党員なのでバイデン政権とは特段強い親和性があるわけではありませんが、バイデン大統領としては2024年の大統領選挙年前になんとかインフレを沈静させたいと考えているようです。
FRBに対しては引き続きインフレ引き締めの政策を継続することを希望しているとも言われており、今年に関しては利上げの上限がさらに高まること、また利下げはほとんど期待できない可能性もではじめています。

パウエルはもともと法学部出身で経済学の畑を歩んできた存在ではありませんが、最近ではポール・ボルカーのようなインフレファイターをめざすボルカー2.0を自称しているだけに、ブレーナード無き後にどのレベルで利上げを止めることになるのかが市場の大きな関心事になりつつあります。

過去のケースをみると景気悪化から利下げがはじまると相場暴落の引き金を引く

このコラムではすでに何度かご紹介していますが、過去の米国におけるFRBの政策を見ていると、利上げが進んだものの景気が悪化してFRBが逆に利下げを始める段階というのが株を中心として相場の暴落の引き金になることが多く、市場参加者はその部分にも関心を集めています。
とくにインフレ対策のためにあまりにも利上げをしてしまうとオーバーキルの状態で相場は相当痛んでしまうことが考えられるため、適度なタイミングで利上げを止めることが期待されますが、中途半端なインフレ対策はかえってリセッション時に問題になることも考えられることからその締め付け加減は非常に難しいものとなり、果たしてパウエルがその大役を務めることができるのかという疑問も持ちあがりはじめています。

足元の相場はFRBの政策動向次第、パウエルの一挙手一投足に異常に反応して日々上げたり下げたりする相場を繰り返しているので、ここからのFRBの政策姿勢は非常に重要であり、相場の行方を大きく左右することになるでしょう。
引き続き注視していくことが求められています。