今年5月久々に3万円の大台を超えてきた日経平均はその後猛烈な強さを見せることとなり、7月前半まではかなり強い上昇相場を演じることとなりました。
それと正相関の動きで上昇を果たしたのがドル円でしたが、7月後半の日銀政策決定会合でYCCの柔軟運用が決定されてからはすっかりその相関が崩れることとなり、夏枯れ相場の影響も受けているのか日経平均は3万2000円を割り込む展開となってきています。
この大きな原因は5月から猛烈に買上げを見せてきた海外投資家が一転して売りにまわり始めたことにあるようですが、一体市場では何が起きているのでしょうか。

上の二つのチャートは日経平均とドル円の年初来の動きを捉えたものですが、5月から7月にかけては相当シンクロした動きを示現していたことがはっきりとわかります。
ただそれ以降はドル円は上昇継続ながら日経平均はもみ合いから反転下落に向っており、足元では完全に相関性が崩れてしまったことがわかります。

円売り=株高は過去にも一時的に現れる相関関係で海外投資家が深く関与

円売りだから株高という相関性は常に日経平均の相場に現れるものではありません。
多くの時間では円安になっても株高にならないことのほうが多いですが、海外投資家が大挙して日本株市場に乗り込んでくる場合、円キャリートレードで調達した円金が為替の変動、とくに円安の進行で利益が減らないように株買いと並行してヘッジで円売りをおこなうときに明確に示現する相関性になっています。
こうした相関性は2012年第二次の安倍政権が発足した後国策で円安と株高を模索し、翌年4月に日銀黒田総裁が就任して大規模な金融緩和に踏み切ったときに明確に現れ、2013年ドル円は海外投資家のドル円買いと日本株買いからなんと15兆円もドル買い資金が流れ込んだといいます。
今年5月から7月までの株高はそこまで大きな資金が日本株市場に入ったわけではありませんが、円安で米株と比較すると割安だった日本株に外人投資家が積極投資を行った結果、3万3700円レベルとバブル崩壊後の最高値を示現することになりました。

まさに円安が株高になるきっかけを作ったわけです。
当然市場では3万5000円超、年末には89年末の高値を超えて3万9000円超、来春は4万円超かといった浮かれた声も聞かれることとなりましたが、現実にはさらなる上昇を果たせぬままに一転して海外投資家が売りにまわったことから相場は反転下落となっています。
この時点で明確に円安=株高と言う相関性の高い公式はくずれてしまったことがわかります。

海外投資家は日本株売りで得られた円ベースの利益を現在そのまま保有中の模様

7月末からは日銀のYCC政策変更に連動するかのように海外勢の日本株リカクが続いていますが、円キャリーで獲得した円資金による決済利益確保後彼らの多くが円安が続いていることからまだその資金と利益を円のまま保有してるようですが、ひとたび円安が止まり円高にした際にドル転してさらに為替で一山設けてレパトリを行おうとしているという話が市場で多く出回りはじめています。
本邦財務省が150円近辺で介入に踏み切ればなんの努力もしないで10円以上の利益にあずかれるのでこの発想はかなり秀逸となり、日本株が下落してもドル円がそれに連動して下がらない理由はこのあたりにもあることが窺われます。
ドル円が円高にシフトするのを本邦に投資した海外勢が待っているというのも随分と皮肉な話ですが、円高がはじまるとそれに乗じたドル円の売りが相当金額加速することも想定しておく必要があることが見えてきます。

次に海外勢が大挙して日本株を買い向かうまで円安=株高という構図は現れない

ここから海外勢が年末もしくは来年にむけて再度大挙して日本株を買い上げることになるならば円キャリートレードも復活して円安=株高という構図が現れることも考えられますが、足元の相場状況を見ますと大きく下げることもない代わりに新高値を更新し続ける動きにはならない可能性がが高まっています。

そもそもこの上昇相場、米国財務省も非常に気にしているようで、来年の米国大統領選の前に日経平均が暴騰して再度バブル相場が到来してしまうと日銀は本格的にインフレ対策のために利上げを行わざるを得ないことになるため、ここ10年で日本から飛び出してきた緩和マネーが大量に本邦に回帰する動きとなることを非常に危惧しているといいます。
米国がそう考えているのでなんでも言うことを聞く日本政府が同調しないわけはなく、国策的に来年の後半までは日経平均はヨコ展開になることは十分にありえそうです。

これまで何度も海外投資家の日本株市場への大量参入という場面を見る機会がありましたが、どうもこうした動きは年間を通じて、あるいはさらに期間がのびて複数年に渡って行われるものではないようで、一旦ピークアウトしてしまうと潮がひくように市場から一斉に資金が引き上げれられてしまうのも海外勢の投資方法の特徴となっているようです。
日経平均がここからさらに崩れて3万円割れにまでなるのかは現状でははっきりしませんが、それが実現しても簡単にドル円は円高にはならないということはしっかり意識しておきたい状況です。