日銀は年明けに行われた政策決定会合で、0.1%の利上げを行いマイナス金利を解除したいという植田総裁の強い希望を受け入れると見られていました。

しかし元旦に発生した能登半島沖での大地震により、利上げの検討は3月ないし4月の政策決定会合まで見送られる結果となりました。

これに対し、政治的なスケジュールが目白押しの3月4月に、日銀が本当に政策変更できるのかという疑問も高まり始めています。

 

今年の日米中銀政策決定会合スケジュール

 

上の画像は、今年の日米中央銀行における政策決定会合のスケジュールです。

1月の次は3月となり、日程的には日銀の方が1日早く開催されます。

3月の会合ではFRBが早くも利下げを開始する可能性があるため、このタイミングで日銀だけが0.1%の利上げを行いマイナス金利の解除に踏み切るとは考えにくい状況です。

また利上げ最大の根拠となる春闘の賃上げの結果も、ギリギリ出そろうかどうかというタイミングであるため、実施の可能性は非常に低いとの見方が高まっています。

窮屈な政治日程とのすり合わせにより利上げは先延ばしか

3月にマイナス金利の解除が実施されないとなると、春闘の結果が出そろう4月の日銀会合が最も順当な実施時期になると思われますが、4月には岸田首相が国賓待遇での訪米を控えているため、この時期の政策変更が最適かどうかという判断が問われます。

さらに4月は衆議院の補選が予定されており、岸田首相がこのタイミングで衆議院を解散する可能性も囁かれ始めている状況です。

また、FOMCが開催されるたびについて回ることになるFRBの利下げのタイミングについては、最低でも3回以上実施される可能性があります。

FRBが利下げを実施したタイミングで、日銀が利上げに踏み切ることは大きなリスクになるため、4月以降の日銀会合で緩和の巻き戻しが粛々と行われる可能性は低く、マイナス金利の解除は想像以上に難しい課題となっています。

そうこうしているうちに、11月には米国大統領選挙が実施されるため、日銀がフリーハンドで自らの政策を実施していくことはさらに困難を極めそうな状況です。

年内の利上げは0.1%の1回限りという見通しも

本来、マイナス金利解除の動きが出れば、市場はさらなる利上げを期待したくなるものですが、一部の日銀ウォッチャーは、日銀が今年否応なく利上げに踏み切ったとしても、せいぜい0.1%まででそれ以上の利上げは行わないとの見解を示しています。

ここまで緩和の巻き戻しを真摯に検討してきたものの、結局1年間何も実施されなかったわけですが、日米の金融政策状況を勘案すると日銀がこれまで現状維持を続けるしかなかったことにも納得がいきます。

特に主要国が利下げに転じる中、日銀だけが周回遅れで利上げを実施すれば、市場に重大な齟齬をきたすことになるため、結局のところ緩和の巻き戻し注視という選択しかできない状況となっています。

米国から緩和の継続を求められる日銀、困難を極める政策決定のタイミング

米国が日銀に対し、主要市場に流動性を供給し続けるよう強く要請されてきたことはよく知られた話ですが、日本は今でも世界で唯一の緩和中銀という立場を維持しています。

そのため、日経株価はバブル以降最大の上げに転じており、円キャリートレードも安定的に実施されているのが現状です。

日銀が直面するこの周回遅れの状況は、すでに利上げを織り込むことなどできない状況に陥っている可能性があるため、政策決定のタイミングは今後さらに困難を極めそうです。

 

1月の政策決定会合では、日銀はついにマイナス金利の解除に動くらしいとの観測が高まり、ドル円は148円台から一気に146円台まで下落する展開となりましたが、この動きの持続性は乏しく、ドル円は再上昇を模索しています。

今後FRBの利下げが現実のものとなれば、相場は一転しドル安円高方向にシフトすることが予想されますが、利下げが決定するまでは流動的な動きが続きそうです。

主要中銀の政策決定が、他国の政策決定の影響を受けることは間違いありませんが、特に日銀に限っては米国の影響を受けやすい立場であるため、それを含め金融政策の行方を予想する必要がありそうです。