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日本時間の31日午前4時に発表されたFOMCの政策金利発表は、市場の予想通り4回連続の利上げ見送りとなりました。

今回の金利据え置きは、既定路線だと言われていたため、市場の関心はパウエル議長が3月の利下げに言及するかどうかに集まりました。

12月に行われたFOMC後の会見で、利下げ開始を示唆する発言を行ったパウエル議長ですが、今回はバランスをとった冷静な発言が目立ちました。

利上げの終了を示唆する発言も出たことから、今後は利下げがどのタイミングで行われるかに市場の注目が集まりそうです。

FOMCが発表した主な声明は次のとおりです。

 

  • 最近の複数の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆している
  • 雇用の伸びは昨年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いまま
  • インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある
  • 委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す
  • 雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、より良いバランスへと移行しつつあると委員会は判断している
  • 経済見通しは不確かで、委員会は引き続きインフレリスクに細心の注意を払っている
  • 委員会はその目標実現を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジを5.25-5.5%に据え置くことを決めた
  • FF金利誘導目標レンジに対するいかなる調整も、委員会はそれを検討する上で、今後入手するデータや変化する見通し、リスクのバランスを慎重に見極める
  • 委員会はインフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信を強めるまで、誘導目標レンジの引き下げが適切になるとはみていない。
  • 委員会は以前公表した計画に記載したように、財務省証券とエージェンシー債、FSE保証付き住宅ローン担保証券(MBS)保有の削減を継続する
  • 委員会はインフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている

 

声明内容を毎回チェックしている方ならおわかりでしょうが、パウエル議長は今回の記者会見でこれらをフォローするような発言に徹しており、3月を利下げの開始時期と断定するような発言は控える姿勢が見られました。

公の場で言質をとられるような発言をしなかったことはもちろん、市場に対し利下げ観測が後退した印象を与えるという点においても、一定の成功を収めることができたと言えそうです。

今回のFOMCは発表前から2円近くも値を下げる異例の展開に

FOMCの開催時は、毎回結果が発表されるまで市場はほとんど動かず、ドル円なども膠着状態になりがちですが、今回はいつもと違う状況が露見しました。

まず午後10時半ごろに発表された指標は軒並み予測を下回り、去年金融不安により経営破綻した地銀の預金の一部を引き継いだ銀行における経営不安が報じられると、市場は一気にリスクオフの流れとなり、FOMCによる結果発表前に、2円近くも円高にシフトするという異例の展開となりました。

ロンドンフィックス後もこの流れはほとんど止まらず、146円台前半で迎えたFOMCの政策発表では現状維持という結果を受け146.700円レベルまで値を戻しています。

さらにパウエル議長の記者会見では、147.440円レベルまで上昇する展開となりました。

この動きは、ほとんどの市場参加者がある程度は事前段階でイメージしていたものの、FOMCの結果発表前に2円近くも値を下げるという展開は、予想外の出来事となりました。

 

FOMC発表前後のドル円の動き 

利下げ期待は後退しつつも依然高いまま

昨年12月のFOMCでは、市場が3月の利下げを100%織り込む状況となったのは記憶に新しいところですが、この1か月、地区連銀の総裁らが事あるごとに講演会などで利下げの準備はまだ整っていないことをアピールしてきたことにより、利下げ期待はようやく後退しつつあります。

しかし今回の発表を受けてもなお、3月利下げの確率は36.5%残しており、依然利下げに対する市場の期待は高いことがわかります。

こうして見ると、ホワイトハウスからの圧力があったからとは言え、12月のパウエル発言のような不確定要素を多く含む内容をリップサービスで口にすることが、いかに大きなリスクを生むかを改めて感じさせる結果となりました。

 

Data CME FedWatch 3月の利下げ確率 

先延ばしになった利下げをどう進めていくかが今後の課題

今月のFOMCも現状維持が基本であったため、波乱なくイベントを通過することができましたが、先延ばしになっている利下げをこの先どう進めていくかが、FRBの大きな課題となりそうです。

市場は異常なほど「利下げ = 株高の再来」との認識を強めているため、その期待が高まれば高まるほど株は上昇しますが、利下げなしとなった途端、相場が大きく下落するという動きが続いています。

本来ならば、年内は利下げには踏み切らず今の状態を維持していくべきところですが、今後どのように利下げのタイミングを見極めていくかが腕の見せ所となりそうです。

市場のFOMCへの期待は、今後まだまだ高まりそうな状況です。