4月相場も、市場のテーマは引き続き日米欧の中央銀行がどのような政策変更を行うかが注目されそうです。

米欧ではすでに利上げが終了しており、今後は利下げのタイミングが気になるところですが、先日周回遅れでマイナス金利の解除を決めた日銀は、今後さらなる利上げを行うかどうかに市場の関心が高まっています。

日米欧による金融政策の方向性とタイミングが、今後大きく相場に影響することは間違いありません。

ただ、本来各国の政権とは一線を画す存在である中央銀行が、その国の政権意向に従わなくてはならない状況に追い込まれ、政策決定の判断に自在性が失われつつあることが見え隠れし始めています。

日銀が金利政策に手をつけられないよう圧力か

Photo Sankei 国会の参考人質疑に出席する植田日銀総裁

 

日銀は3月の政策決定会合で、マイナス金利の解除を決定しました。

0.1%ではあるものの実に17年ぶりとなる利上げとなったわけですが、今後の利上げについて市場は、政界から圧力がかかったものと受け止めています。

岸田政権からは、9月に行われる党の総裁戦が終了するまで、利上げには一切触れるなとの圧力がかかっていると見られ、米国財務省からも大統領選が終わるまで、これ以上緩和を巻き戻すような政策を行わないよう圧力をかけられているのではないかとの見方が強まっています。

日経新聞は3月に、今年7月および10月に追加利上げを行うのではないかという観測報道を行っていますが、日銀の内情に詳しい向きによると、年内の利上げの見込みはゼロに近く現状維持のまま年を越す可能性もあります。

民主党と共和党の間で揺れる金融政策の行方

Photo Reuters 議会証言をするパウエル議長

 

政界から干渉を受けると言えば、米国FRBも同じようで、パウエル議長は3月のFOMCで、6月から年3回の利上げを開始すると明言していたにもかかわらず、今では後ずれを示唆しています。

まず基本的な問題として、米株が史上最高値を更新しさらに上昇しようとしている中での利下げには、多くのアナリストたちから疑問の声が上がっています。

市場では、早期の利下げこそがさらなる株高に繋がるとの期待も高まっていますが、インフレ指標によると米国のインフレは完全に沈静化しているとは言えない状態にあり、米国内のガソリン価格は春先から6月にかけてまた高騰するであろうという観測も出回っていることから、その先行きには暗雲が立ち込めています。

最近ではロシアのプーチン大統領が、バイデン政権への圧力か、原油価格の値上げを宣言しており、これにBRICSプラスに加盟国が足並みを揃えれば、米国経済への影響は大きなものとなります。

7月は共和党と民主党の党大会を控えており、正式に大統領候補が決定するタイミングとなるため、6月までにFOMCによる利下げが行われなければ、利下げはさらに後ずれする可能性が高まります。

また、10月は大統領選挙が間近であることから、このタイミングで利下げを行えば政権に忖度しているのではないかと批判されかねないため、結果的には12月まで利下げに踏み切ることはできないのではないかとの見方が強まっています。

パウエル議長自身は共和党員であるため、議会証言で民主党議員から横やりを入れられ激昂したこともありましたが、背景には現行政権に配慮せざるを得ない事情があると見られ、政策の立案や変更は事のほか難しい状況にあることが窺えます。

昨年3月に発生した米国地銀破綻時のような異常事態ともなれば、利下げの大義名分が立ちますが、それに匹敵するほどの理由がない限り、年内に利下げが実施される可能性は非常に低いものと思われます。

本来中央銀行は、政権の政策意向とは関係なしに、独自の政策を打ち出すことができる存在であるはずですが、実際のところ日米ともに政府から深く干渉を受けているのが現状です。

また、政府への忖度を余儀なくされることにより、為替相場にも大きな影響が及ぶことは間違いありません。

ドル円は高止まり継続の可能性も

日米政府の意向を反映するドル円は、当面の間、高い水準を保ったまま膠着状態が続くものと思われます。

現状では152円越えでの介入が警戒される財務省の動きが、相場を最も大きく動かす要因となりそうです。

下落幅は介入資金の額にもよりますが、ほどなくしてまた元の水準に戻る可能性もあります。

いずれにせよ常日頃から、ドル円以外の通貨ペアの動向も探りつつ、介入時に備えておく必要もありそうです。