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相場ウィークリーにて、イランによるイスラエルへの報復攻撃が近いことをお伝えしましたが、14日、とうとうそれが現実のものとなりました。

週明けは、あらゆる金融市場がリスクオフに動き、ドル円相場も円安にシフトすることが予想されます。

為替相場には、警戒されていた財務省による為替介入とは別のテーマが示現することになり、今後の動向に注目が集まっています。

中東のアラブ諸国がどう追随するかがポイント

今回実施されたイランの報復攻撃は、ドローンを多用している点が、過去における地上戦とは異なります。

イランはこれまで、悪化する中東情勢に対し冷静な姿勢を貫いて来ましたが、今回の報復攻撃を

中東のアラブ諸国はどう評価するのかが、最大のポイントになると思われます。

BRICSプラスとの連携を強めるサウジアラビアやUAEなどの産油国が、反米という共通意識から石油供給の面でも攻撃を与えることになれば、経済、金融への影響は大きく、相場も急変する可能性もあります。

特に懸念されているのが、イランによるホルムズ海峡の封鎖です。

これが現実のものとなれば中東諸国にも石油輸出のダメージが及ぶため、そう簡単には実行しないであろうとの楽観的な意見もありますが、反米勢力が同盟を強化し揺さぶりをかけてくる可能性も排除できません。

すでにロシアは、11月に行われる米国大統領選への圧力として、単独で原油価格を引き上げることを表明しており、BRICSプラスの産油国がそれに同調すれば、原油価格は急騰し、西側経済は武力攻撃以上のダメージを受けることになります。

インフレ鎮静化により期待されたFRBによる利下げは先延ばしとなり、エネルギー価格の上昇により、利下げどころか利上げすら検討しなくてはならないという事態も想定しておかなくてはなりません。

米株と米債金利は初動で下落も限定的か

ここ最近、史上最高値を更新し続けてきた米株市場は、これまでイラン参戦によるリスクをほとんど織り込んでおらず、週明け早々リスクオフの展開に転じることは間違いありません。

ただ、ウクライナへの軍事侵攻が開始した際は、物理的な攻撃の影響による相場の下落は、それほど長く続かなかったという事は頭に入れておく必要がありそうです。

米債はリスクオフにより買われ、金利は低下することになりますが、それもどれだけの期間続くかは不透明な状況です。

リスクオフの円買いも一時的で原油価格の高騰によりドル買いシフトか

イランの報復攻撃により、為替相場はリスクオフから円やスイスフランなどが買われる展開となることが予想されます。

しかしそれはあくまでも初動だけで、原油価格をはじめとするエネルギー価格が高騰するとともに、米債金利は上昇しドル円もドル高方向に転じる可能性が高くなります。

FRBによる年内の利下げが絶望的となれば、日米金融当局における政策の差は現状のままとなり、場合によっては今以上に広がることも考えられます。

そうなった場合、ドル円は再度160円方向に動き出す可能性が高まります。

大統領選を前に追い込まれるバイデン政権

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11月に大統領選を控えるバイデン政権にとって、このタイミングでイスラエル情勢が悪化することは大きな懸念材料です。

イスラエルを支持する姿勢を示してきただけに、反米勢力からの攻撃を免れる事はできず、今回の報復攻撃が、バイデン大統領が更に票を落とすきっかけとして作用する可能性が高まっています。

バイデン大統領としては、イランへの攻撃には反対する姿勢を示していますが、イスラエルを切り捨てる訳にもいかず、難しい立場に追い込まれている状況です。

政敵であるトランプ前大統領が、この点を攻撃してくるのは時間の問題であり、イスラエルの今後の動向がバイデン大統領の勝敗を決めるといっても過言ではなさそうです。

イランを擁護する中東アラブ諸国が、反イスラエル、反米の意識を高めれば高めるほど、金融市場に及ぼすダメージは大きくなることが予想されるため、今週はいつにも増した注意深いトレードを心がけたいところです。