Photo Reuters. https://www.reuters.com/article/us-usa-fed-powell-slr-idUSKBN2B92QI

市場が注目していたFOMCの政策金利発表が行われ、大方の市場の予想通り引き続き据え置きとなりました。

声明の発表後に会見を行ったパウエル議長は先般のWSJのウェビナー発言で市場との対話に失敗したことに懲りたのか相当慎重な発言となりましたが、基本的にFRBはインフレについてはまったく心配しておらず、23年まで金利は低金利のまま据え置くことを強く訴求したことから発言の内容はほとんどこれまでとは変わらないものの、株式市場は安堵してNYダウとS&P500は史上最高値を更新する動きとなりました。

NASDAQもここのところのハイテク株の大幅下落が一息ついており、債券金利の上昇の影響が徐々に薄れつつあることを感じさせられます。

インフレ進行の全否定に終始

パウエル議長は昨年3~4月の物価上昇率が低かったことから今後1年間については物価上昇率が高く推移するであろうことを認めました。

また新型コロナ感染の終息にともなって経済が再開し、今後消費が急回復することからさらにインフレ圧力が強まる可能性も示唆していますが、これはあくまで一時的な物価上昇にすぎず政策金利見通しには全く影響を与えないことを強調しています。

「インフレ取るに足らず」ということを終始訴えることで当分テーパリングは行わないことを印象付けました。

株式市場はこれを好感したようですが、問題は債券市場で2年債、5年債は利率を下げる動きとなったものの10年債以降の長期債の債券は高止まりを見せ、パウエル発言で金利が低下するということにはなりませんでした。

こうなるとここからの債券金利動向が非常に気になるところですが、この状況が継続するのであればさらに金利上昇が示現するリスクも高くなりそうで、ドル円はさらに上昇することも視野に入れる必要がでてきているようです。

6月のFOMCでは金利低下対策の実行が求められるか

今回は口先発言だけに終始したパウエル議長の会見でしたが、いよいよこの先債券金利が上昇することになればFRBはイールドカーブコントロールなりツイストオペの実機なり、具体的な政策を持ち出してくることを余儀なくされそうで、そこまでにどのレベルまで米債金利が上昇することになるのかが非常に大きな焦点になってくるものと思われます。

一部の債券アナリストは年内に10年債利回りが3%に到達するといった猛烈な予想を口にし始めており、債券市場はすでに利上げを織り込みに行き始めているといった観測も高まってきています。

FRBとしてはとにかく金利上昇はインフレの兆候とは関係ないという言い方で乗り切っていきたい状況であるのが強く見えていますが、果たしてそれで乗り切ることができるのかどうかはここからの相場では相当大きな問題になりそうです。

民主党のバイデン政権が誕生してからFRBに投入されるメンバーの顔ぶれも徐々に変わりつつあり、トランプに指名されたパウエルも任期切れで退任・交代する可能性が高まりつつあり、今後FRBが打ち出す方向性にも変化が生じることも考えられるところです。

市場が当然のようにFRBの政策に依存しきる相場というのは大きな問題ですが、この傾向はまだまだ延々と続きそうです。

米株市場のほうは1400ドルの給付金の支給がすでに始まっていることからロビンフッダーのような個人投資家が新たに投資資金を株式市場に投入し始めているようで、債券金利の上昇をほとんど気にしない向きが大量に市場に参入しているようですが、こうした上昇も果たしていつまで続いていくことができるのかにも大きな疑問が残されています。