3月31日、国内のFX業者の業界団体である一般社団法金融先物取引業協会が同月22日の早朝窓開けで起きたトルコリラ円の暴落相場によるロスカット等未収金発生状況を速報値で公表しています。

その金額がかなり莫大なもので2019年1月3日に起きたフラッシュクラッシュによるロスカット等未収金の発生金額よりも大きなものであったことが判明し、話題になりはじめています。

暴落の原因は前週末にエルドアン大統領が中銀総裁を更迭したことが原因

トルコリラ円4時間足推移 3月22日前後

この22日早朝の暴落ですが、前週末にトルコのエルドアン大統領がアーバル総裁を突然更迭したことから週内で間に合わなかった相場が週明けになって大きく窓を開ける形で暴落したもので、対円だけでもトルコリラは15%以上の下落となり15円台だった価格は一瞬にして13円台まで下落することになりました。

トルコ中銀はここのところ利上げを行うなどしてきたことからスワップ狙いの本邦の個人投資家は挙ってトルコリラ円を買い向かいスワップの獲得を続けてきましたが、週明けの窓開け暴落は投資家自らが設定したストップロスや業者が安全対策で設定している強制ロスカットの水準をはるかに下抜けたところから始まったことからポジションを保有していた個人投資家は押しなべて大きな損失を食らうこととなりました。

多くの個人投資家はその後業者から求められた追証を支払うことで難を逃れることとなりましたが、それを支払えない状況の個人投資家も非常に多く、今回その数と金額の合計が速報値ではありますがロスカットにより発生した追証の未収金という形で公開されています。

未収金の発生件数と金額は2019年正月より大きい状況に

今回、未収金として発生した件数は店頭FXで3280件でそのうち3266件が個人、法人はたった14件ということで案件がトルコリラ円主体ということもあって圧倒的に個人の件数が多くなっています。

市場FX、所謂「くりっく365」の取引所FXでは全体で178件でこちらはすべて個人投資家ということになります。

ここで言う法人というのは会社を設立して法人格を取得しその名前で業者登録しているケースがほとんどですから、ほぼすべて個人が損失を被ったと考えても間違いはなさそうです。

2021/3/22:為替相場変動に係るロスカット等未収金発生状況(速報値)、データ:一般社団法金融先物取引業協会

気になるロスカット未収金ですが、合計で12億8700万円となっており2019年1月3日のフラッシュクラッシュは件数が合計が5957件であったものの未収金トータルの金額が7億900万でした。

比べますと件数は半分強ながら未収金金額は1.8倍強ということで1件あたりの損失はかなり大きなものになっていることがわかります。

未集金額を件数で単純に割ってみた平均でも今回はひとりあたり372000円強となっており、平均金額を出すことに意味があるのかどうかは判りませんが、かなり高額なものとなってしまったことがわかります。

参考資料2019年1月3日フラッシュクラッシュの未収金発生状況

国内業者にゼロカットシステムないのが最大のリスク

為替相場におけるこうした瞬間的大暴落というのはだいたい2年から3年に一度思わぬ形で起こるものですが、月曜の窓開けタイミングに起きたのは久々で週を超えてポジションをもつことが非常にリスクのあるトレードであることを改めて感じさせられる内容となりました。

特に国内業者は店頭FX業者でも取引所FX業者でも証拠金を超えた金額の支払いを免除されるというEU圏ではすべての業者に導入が義務づけられている、いわゆるゼロカットシステムが金融庁の規制により一切導入できない状況にあることから、暴落が起きるたびに個人投資家は追証の支払いを求められることになっているのです。

特にこうした投資取引の追証については例え自己破産しても免除されるものではありませんから相当なリスクであり、国内業者で取引きをすることがとてつもない危険性を背負ったものであることがわかります。

これだけをとってみても海外業者で取引きすることはかなり安全であり、ハイレバレッジの利用がリスクと言われることが多いわけですが、実は証拠金以上の損失がでても追証を払わなくて済むことが個人投資家にとって最大のメリットであることを改めて認識しなくてはならない状況となっています。

そもそも高金利通貨といいますととにかくスワップを獲得してインカムゲインを楽に積み上げられると思われがちですが、新興国であればあるほど政治リスクを抱えて取引することになる点も改めて事前理解しておくことが必要になっています。