バイデン大統領は米国における失業者が適切な職を提示され、それを受けない場合、失業手当を失う恐れがあると不思議な警告を労働者に発して注目を浴び始めています。
実はワクチン接種が進みかなり米国経済が回復する中で多くの求人が市場に出回るようになっているにも関わらず応募者が少なく、なかなか雇用が確保できない状況が現実のものになっていることが背景にあるようです。
考えてみますと4月の雇用統計の非農業者部門雇用者数が著しく市場予測から低下してしまったのもこうした状況をすでに示現している可能性がありそうでここからの数字の推移が気になるところです。
米国商務省の開示したデータが驚きの状況に
米国商務省の経済分析局が公式に開示しているデータによれば、新型コロナ対策の国民支援で始まったいわゆる政府からの現金給付金は、バイデン政権に移行してからもさらに大きな金額が積み上がり2020年度の第四四半期末には5000ドルを超え始めており、個別家計の34%にまで達していることが明らかになりました。
コロナ感染で多くの産業が継続不能を余儀なくされた期間における公的な給付金の支給ですから決して間違ったやり方であるとは言えませんが、現実の社会では働きに出るよりも失業給付金等をもらって投資にでも資金を使うほうがよほど楽で、かつ収入が増えてしまうという現実を多くの労働者が認識してしまったことがこうした状況を示現させているといえそうです。
米国の労働生産性は一気に下げる可能性も
こうした米国の給付金が非常に手厚い対応はすでにMMT理論の実践が民主党政権で始まっていることを強く感じさせられます。
このMMT理論については常に賛否両論が市場に渦巻いていますが、過度な給付金支給型経済で一部の富裕層と残り殆どが貧困層という社会構造が進む米国では今後さらにベーシックインカム的な支給が進むことはもはや止められそうもない状況で、ますます労働生産性が低下して思想は高邁でも実際の経済はそうとう停滞する社会が現実のものになりそうで非常に危惧されるところにさしかかっています。
特に米国のような社会で計画経済的な動きが蔓延ることになった場合にどこまで資本主義の仕組みが壊れてしまうのかはまったく想像できないものがあり、旧ソ連のような計画経済的な社会の到来は金融市場にも驚くべき変化をもたらす可能性が危惧されるところです。
FRBが主導する人工値付け相場の賞味期限も大きな注目点に
足もとでは米国の経済指標にいいものが出るたびにインフレが加速しFRBが無制限な緩和からテーパリングに政策を切り替えるのではないかといった危機感が金融市場を覆うようになり、米株は景気が回復し企業業績が高まっても売られる始末、米債も売込まれるといった実にパラドキシカル相場を示現しはじめています。
FRBの緩和こそが株価の上昇要因として定着してしまうというのもねじれた相場状況を示唆していますが、インフレが到来すれば確実に中央銀行は金利を上昇させざるを得ないのはもはや当たり前の話で、FRBにより相場が崩されるタイミングがいつやってくるのかにも市場の関心が集まるところです。
一部の経済アナリストはすでにFRB主導のこの相場はバブルという領域から完全に国家管理の市場へと移行しつつあり、ここからどうなるのかはまさに前人未到の世界に入りつつあると警鐘を鳴らし始めています。
ここでご紹介したように労働者が給付金経済でまともに働かなくなる社会、FRBが緩和をするからこそ上昇を継続する株式相場といった状況は既におかしなところに突入し始めていることをしっかり認識する必要がありそうです。
ここからは何かの拍子に市場がかつてないような大幅な巻き戻しに直面する危険性はまったく排除できず、常に意識しなくてはならない時間帯に入ってしまったようです。